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自筆証書遺言の方式の緩和

 平成30年7月6日に成立し、同月13日に公布された改正相続法のうち自筆証書遺言

の方式の緩和(財産目録のワープロ作成等の容認)は平成31年1月13日に施行されます。

 民法968条1項は下記の様に定めています。

(自筆証書遺言)
第968条
1.自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
 自筆証書遺言は全文を「自書」(手書き)することが求められており、ワープロ打ちをすることは認められていません。しかし、財産が多数ある場合に財産目録を含めて全文を手書きすることは大変負担になります。そこで改正相続法は自筆証書は自筆(手書き)で行うとの規定(968条1項)は維持しつつ、自筆証書遺言に一体のものとして添付する財産目録については全文自書である必要はなく、ワープロ打ちをしたものや通帳や権利証などをコピーをしたものに自書捺印することを認めることとしました。
 
【新民法】
(自筆証書遺言)
第968条
1.自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2.前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3.自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
 
 この改正法は他の改正相続法の規定に先立ち、平成31年1月13日に施行されます。もっとも遺言の本文については全文自筆が求められますし、目録が複数にわたる場合には各葉に、両面に記載があるときは両面に自書捺印が求められるなど、なお自筆証書遺言の作成には注意が必要であり、公正証書遺言(民法969条)の方が安心と言えそうです。
【ご参考:中日新聞2018年10月18日「「公正証書」が安全、確実 遺産「争族」回避へ遺言書を」