現在「民事裁判手続等IT化研究会」において、民事訴訟を中心にIT化について検討がなされています。これに先立ち、日本経済再生本部に設置されていた「裁判手続等のIT化検討会」は、平成30年3月30日に「裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ―「3つのe」の実現に向けて―」を公表していました。研究会における検討はこの取りまとめを受けて、より具体的な制度化・法制化・実務運用を目指して行われているものです。
ところで、ここでいう「3つのe」とは①e提出(e-Filing)、②e法廷(e-Court)、③e事件管理(e-Case Management)のことをいうとされています。そして「e提出」では「主張・証拠をオンライン提出に一本化すること」や「手数料の電子納付・電子決済」「訴訟記録を電子記録に一本化する」ことが、「e事件管理」では「主張・証拠への随時オンラインアクセス」「裁判期日をオンラインで調整」「本人・代理人が期日の進捗・進行計画を確認する」ことが、「e法廷」では「ウェブ会議・テレビ会議の導入・拡大」「口頭弁論期日(第1回期日等)の見直し」「争点整理段階におけるITツールの活用」が主な内容とされています。
もっともこの裁判手続のIT化は国民の裁判を受ける権利(憲法32条)や裁判の公開(憲法82条)を損なうことが無いように、むしろこれを実質的に保障するものとして行われなければなりませんし、現状でも形骸化しているとも言える民事訴訟の直接主義・口頭主義をより形骸化させることがないようにしなければなりません。研究会の議論はまだ始まったばかりですが、裁判手続のIT化は弁護士等法律実務家は勿論ですが市民の裁判を受ける権利に大きな影響を与える取り組みであり、今後も注目していく必要があります。