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判断力の低下の不当な利用(4条3項5号)

【消費者契約法4条3項5号】

 当該消費者が、加齢又は心身の故障によりその判断力が著しく低下していることから、生計、健康その他の事項に関しその現在の生活の維持に過大な不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり、裏付けとなる合理的な根拠がある場合その他の正当な理由がある場合でないのに、当該消費者契約を締結しなければその現在の生活の維持が困難となる旨を告げること。

 

 平成30年消費者契約法改正において新設された「判断力の低下の不当な利用」(4条3項5号)は、例えば、物忘れが激しくなるなど加齢により判断力が著しく低下した消費者の不安を知りつつ、「投資用マンションを持っていなければ定期収入がないため今のような生活を送ることは困難である」と告げて勧誘したり、 認知症で判断力が著しく低下した消費者の不安を知りつつ「この食品を買って食べなければ、今の健康は維持
できない」と告げて勧誘するなど、高齢消費者などが生計・健康などに関し、その現在の生活の維持に過大な不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり契約を締結しなければその現在の生活の維持が困難となる旨を告知して消費者を困惑させる類型です。加齢や、認知症等の心身の故障により契約の締結に合理的な判断をすることができない事情を利用して本来不必要な商品、役務にかかる契約を締結させる相談事例が多く存在するとされています(消費者庁「消費者契約法の一部を改正する法律(平成30年法律第54号)の主な内容」)。

 

 消費者が

① 加齢又は心身の故障により判断力が著しく低下していることから、
② 生計、健康等に関し現在の生活の維持に過大な不安を抱き

 事業者は

③ これを知りながら、
④ 正当な理由がないのに、不安をあおり、契約を締結しなければ現在の生活の維持が困難となる旨告げ

 消費者が困惑して契約をしてしまった場合には取消が可能となります。