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配偶者居住権の評価

 

平成307月に成立した改正相続法では残された配偶者の生活に配慮する観点から配偶者の居住の権利を保護するための方策として配偶者居住権の制度が創設されています(民法1028条以下)。配偶者居住権は、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人の所有建物を対象として,終身又は一定期間,配偶者にその使用 又は収益を認めることを内容とする法定の権利を新設し,遺産分割における選択肢の一つとして,配偶者に配偶者居住権を取得させることができることとするほか,被相続人が遺贈等によって配偶者に配偶者居住権を取得させることができることにするものです。

 

 配偶者が居住建物の所有権を相続する場合、その評価額が高額となることが多いことから、その他の財産(預貯金など)を取得することができなくなってしまい、居住建物の売却を余儀なくされる場合も生じ得ます。そこで配偶者居住権を配偶者が、負担付きの所有権を他の相続人が取得することが可能とすることで、配偶者がその余の財産もこれまでよりも多く取得できるようにすることが目的となります(法務省「配偶者の居住権を長期的に保護するための方策(配偶者居住権)」参照)。

 

 ところで、この配偶者居住権の評価については法制審の審議段階において「長期居住権の簡易な評価方法について」として考え方が示されています【部会資料19-2】

 

 これによると例えば建物の長期居住権の価額については「固定資産税評価額-長期居住権付所有権の価額」であるとし「長期居住権付所有権の価額」は長期居住権を設定した場合に建物所有者が得ることとなる利益の「現在価値」であるとされ、建物の耐用年数,築年数,法定利率等を考慮し配偶者居住権の負担が消滅した時点の建物敷地の価値を算定した上,これを現在価値に引き直して求めるとされています。なお現在価値に引き直す際に用いられるライプニッツ係数は債権法改正法施行(202041日)後の法定利率である年3%を前提とするものが配偶者居住権の規律が施行される20207月時において適用されることとなります。