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アパートローンの「事業性貸金債務」該当性(新民法465条の6)

 改正民法においては、事業性貸金債務の個人保証については原則として保証契約に先立って保証意思宣明公正証書を作成することが求められます。保証意思宣明公正証書の作成を欠いた保証契約は無効となります(新民法465条の6)。

 

【新民法】

第三目 事業に係る債務についての保証契約の特則
(公正証書の作成と保証の効力)
第465条の6
1.事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。
2.<略>
 ところでサブリースとも関わるアパートローンにおいても建物建築や不動産取得のためのローンには第三者個人保証人が求められる場合も多いとされています。このアパートローンの個人保証について新民法施行後においては事業性貸金債務の保証として保証契約に先立つ保証意思宣明公正証書の作成が必要となるのかが問題となります。
 
 この点、立法担当者の解説では、新民法465条の6の「事業」とは、一定の目的をもってされる同種の行為の反復的遂行をいい、「事業のために負担した(する)貸金等債務」とは、借主が借り入れた金銭等を自らの事業に用いるために負担した貸金等債務を意味するとされています。そして、賃貸を目的とする不動産を購入する(又は建築する)ために負担した貸金等債務(いわゆるアパートローン)は「事業のために負担した(する)貸金等債務」に該当すると解されるとされています(商事法務「一問一答民法(債権関係)改正」147頁)。
 アパートローンは、不動産賃貸という事業を行うための建物を取得するための借入れであり、一棟目の不動産の建築・購入についても不動産賃貸業のための開業準備行為とも言えますが、これも不動産賃貸という反復的遂行である事業のために負担する債務となるから事業性貸金債務に該当すると解すべきと考えます。したがって、新民法下ではアパートローンの個人保証人については原則として保証契約に先立ち保証意思宣明公正証書の作成が必要となると考えます。