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アパートローンの「事業性貸金債務」該当性(その2)

 「Practical 金融法務債権法改正」(三井住友フィナンシャルグループ・三井住友銀行総務部法務室著・一般社団法人金融財政事情研究会)によると、アパートローンにおいては事業継承する見込みである推定相続人1名以上を連帯保証人に徴求するのが実務であるとされています(90頁)。

 また、アパートローンは賃貸に供する目的で取り組むものであるため、同種行為の反復的継続的遂行を予定しており、原則として「事業性貸金債務」に該当すると解されるが、単に相続対策を目的として小規模のアパートローンを借り入れるようなケースまで「事業性貸金債務」と解すべきか否かについては疑問が示されており、「事業」の解釈が明らかになることが望まれるとされています(93頁)。

 しかし、小規模であっても(所得税法上の事業所得に該当しなくとも)賃貸を反復継続するのであれば事業性貸金債務になお該当すると解すべきです。

 なお、同書においても推定相続人というだけでは保証意思宣明公正証書作成が不要となる経営者等(新民法465条の9)には該当しまないとされています(93頁以下)。また、アパート経営の場合には、アパートの建設行為とその後の賃貸行為を一体として反復継続的遂行の有無を考えるのではなく、建設したアパートの賃貸行為の反復的継続的遂行を問題とすべきではないかと思われるとされています(138頁)。

 アパートローンについては事業性貸金債務に該当することを前提に、新民法下において個人保証人を徴求する場合には保証契約に先立って保証意思宣明公正証書を作成することが求められると考えておくべきです。