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不動産(負動産)の所有権放棄

 

 近時、少子高齢化や遺産分割未了の不動産の増加などの影響もあり、空き家問題や所有者不明の不動産の扱いが社会問題化しています。それとともに、資産価値の極めて乏しい不動産(負動産などと呼ばれています)の所有権を放棄して国に帰属させることができないかが議論されています。資産価値が無く、売却も困難な不動産は固定資産税や管理費の負担ばかりがかかることになることから、これを放棄することにより負担から免れることができないかという問題になります。

 

 不動産の所有権放棄について注目されている判例が広島高裁松江支部平成28年12月21日があります。同判決は一般論としての不動産の所有権放棄を認めつつ、当該事案における所有権放棄は権利の濫用にあたり許されないとしています。民法論としても興味深いのですが、少子高齢化社会のもとで維持・管理ができない不動産が増加することは所有者のみならず地域や行政等にも様々な影響を及ぼす可能性があり対策が求められています。

 

 所有権放棄については例えば以下の文献があります。

 

・土地総合研究2017年春号「土地所有権の放棄は可能か」(早稲田大学大学院法務研究科教授吉田克己)

 

・土地総合研究 2017年春号「土地所有権の放棄―所有者不明化の抑止に向けて―」(札幌学院大学法学部教授田處博之)

 

・国民生活2018. 6 8土地所有権放棄の現状と課題-原野商法の二次被害を踏まえて-」(田處博之札幌学院大学法学部教授)

 

訟務月報6210号松江地裁平成26年(ワ)第151号平成28年5月23日判決