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登記制度・土地所有権の在り方等に関する研究会中間取りまとめ

 

 「登記制度・土地所有権の在り方等に関する研究会中間取りまとめ」においても土地の所有権放棄制度について言及されています。

 「登記制度・土地所有権の在り方等に関する研究会 」(座長=山野目章夫早稲田大学大学院教授)は、登記制度や土地所有権の在り方等に関する中長期的課題について、民事基本法制の視点から、その論点や考え方等を整理することを目的として、一般社団法人金融財政事情研究会設置・運営により平成29年10月から検討が続けられています。

 平成30年6月に公表された「登記制度・土地所有権の在り方等に関する研究会中間取りまとめ」「第3 土地所有権等の在り方」「2 土地を手放すことができる仕組み等」において所有権放棄制度について以下の言及がなされています。

 

(1)検討事項

 所有者不明土地を防止する方策の一つとして,土地所有権の放棄を認めるべきではないかとの指摘がある。現行法上,土地所有権を一方的に放棄することができるかどうかについて,最高裁判例は見当たらず,見解も分かれているところであり,法制的な措置を講ずることを含め,土地所有権の放棄の是非について検討することとした。

 そして,仮に土地所有権の放棄を認める場合には,放棄された土地の受け皿が問題となることから,放棄された土地の帰属先についても検討することとした。

 さらに,所有者不明土地の中には,土地所有者が土地の管理を事実上放棄しているものも多く存在すると考えられることから,一定期間にわたり管理がされていない土地について所有権が放棄されたものとみなすといった,みなし放棄制度の導入の是非についても検討することとした。

(2)検討の方向性

(土地所有権の放棄の是非)

 現行法上,土地所有権の放棄ができるかについては,放棄は可能であると解する見解もあるが,所有権は権利と義務の総体というべきものであり,所有者の意思で,一方的に放棄して義務を免れることができるとは解し難いとの意見や,仮に土地所有権を一方的に放棄できるとすると,民法第239条第2項により土地は国庫に帰属し,所有者の一方的意思表示で土地の管理費用等の負担を国に付け替えることができることになり不合理であることなどからすると,現行法上,所有者の単独の意思表示による土地所有権の放棄はできないと解すべきとの意見があった。

 また,土地所有権の放棄を可能とする立法措置を講ずるに当たっては,所有者が土地所有権を放棄してその経済的負担等を免れることを許容できる場合があるかを具体的に考えなければならず,放棄の要件,放棄された土地の帰属先などの実質的要件をまず検討する必要があるとの意見があった。

(放棄された土地の帰属先)

 放棄された土地所有権の帰属先については,国,地方公共団体,ランドバンク等の機関が考えられるが,いずれにするのが適切かは,財政負担の観点等から考える必要があるとの意見や,土地がいったん国庫に帰属した場合には,利用要望があったとしても法令の範囲内での対応が求められることから,帰属後の土地利用の在り方の観点を含めた議論が必要であるとの意見があった。

(みなし放棄制度の導入の是非)

 一定期間にわたり管理がされていない土地について,所有権が放棄されたものとみなす制度については,上記の意思表示に基づく放棄の議論と密接に関連することから,この議論を深めた上で,引き続き検討されるべきであるとの意見があった。

(検討の方向性)

 そこで,土地所有権の放棄を認めるには立法措置を講ずる必要があるという基本的な理解の下,土地所有者が一方的に管理責任を帰属先の機関に押し付けることがないような放棄の要件・手続の在り方や,民事における土地利用の円滑化に資する帰属先の機関の在り方につき,引き続き検討を進めるとともに,みなし放棄制度の導入の是非についても議論を深め,土地所有権を手放すことができる仕組み等の在り方につき,関係機関と連携して,国土政策や広い意味での公有財産政策等の幅広い観点から総合的に検討を進めることとする。

 

【民法】

(無主物の帰属)第239条

1.所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。

2.所有者のない不動産は、国庫に帰属する。