現行民訴法におけるIT化への対応

 平成16年改正民事訴訟法では、社会のIT化に対応し民事訴訟等の手続をより国民に利用しやすいものとするために,民事訴訟に関する手続における申立て等のうち、法令上書面をもってすることとされているものであって、最高裁判所の定める裁判所に対してするものについては最高裁判所規則で定めるところにより、インターネット等を利用して申立て等をすることができるとする規定が新設されました (民事訴訟法132条の10)。

 

【現行民事訴訟法】

第七章 電子情報処理組織による申立て等

第132条の10

1.民事訴訟に関する手続における申立てその他の申述(以下「申立て等」という。)のうち、当該申立て等に関するこの法律その他の法令の規定により書面等(書面、書類、文書、謄本、抄本、正本、副本、複本その他文字、図形等人の知覚によって認識することができる情報が記載された紙その他の有体物をいう。以下同じ。)をもってするものとされているものであって、最高裁判所の定める裁判所に対してするもの(当該裁判所の裁判長、受命裁判官、受託裁判官又は裁判所書記官に対してするものを含む。)については、当該法令の規定にかかわらず、最高裁判所規則で定めるところにより、電子情報処理組織(裁判所の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下同じ。)と申立て等をする者又は第三百九十九条第一項の規定による処分の告知を受ける者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。第三百九十七条から第四百一条までにおいて同じ。)を用いてすることができる。ただし、督促手続に関する申立て等であって、支払督促の申立てが書面をもってされたものについては、この限りでない。

2.前項本文の規定によりされた申立て等については、当該申立て等を書面等をもってするものとして規定した申立て等に関する法令の規定に規定する書面等をもってされたものとみなして、当該申立て等に関する法令の規定を適用する。

3.第一項本文の規定によりされた申立て等は、同項の裁判所の使用に係る電子計算機に備えられたファイルへの記録がされた時に、当該裁判所に到達したものとみなす。

4.第一項本文の場合において、当該申立て等に関する他の法令の規定により署名等(署名、記名、押印その他氏名又は名称を書面等に記載することをいう。以下この項において同じ。)をすることとされているものについては、当該申立て等をする者は、当該法令の規定にかかわらず、当該署名等に代えて、最高裁判所規則で定めるところにより、氏名又は名称を明らかにする措置を講じなければならない。

5.第一項本文の規定によりされた申立て等(督促手続における申立て等を除く。次項において同じ。)が第三項に規定するファイルに記録されたときは、第一項の裁判所は、当該ファイルに記録された情報の内容を書面に出力しなければならない。

6.第一項本文の規定によりされた申立て等に係る第九十一条第一項又は第三項の規定による訴訟記録の閲覧若しくは謄写又はその正本、謄本若しくは抄本の交付(第四百一条において「訴訟記録の閲覧等」という。)は、前項の書面をもってするものとする。当該申立て等に係る書類の送達又は送付も、同様とする。

 

 また、督促手続については、簡易迅速を旨とする手続の特質にかんがみ、処分の告知をオンラインで行ったり支払督促等を電磁的記録により作成することができるようにするなど、その手続全体にわたって原則としてオンライン化を進めることとされました(民事訴訟法397条ないし402条)。

 

 民事裁判手続等IT化研究会「民事裁判手続のIT化に関する経緯等」【参考資料1-1】によると、改正法施行後、支払督促手続については平成18年にオンラインでの申立て等を可能とする「督促手続オンラインシステム」が導入され、年間9万件以上利用されるなど利用者の利便性を向上させるためにIT技術の活用が図られてきたとされています。

 

 他方で、民事訴訟一般については、民事訴訟法132条の10を受けて「電子情報処理組織を用いて取り扱う民事訴訟手続における申立て等の方式等に関する規則」が定められ【参考資料1-2】、平成16年以降、民事訴訟規則により書面等によりすることとしている申立て等のうち「ファックスで提出することができるもの」についてはオンラインでの申立て等を可能とする試験的な運用が「一部の裁判所において」実施されましたが利用実績に乏しかったことなどもあり平成21年3月にその試行が終了されたとのことで、現行の最高裁判所規則等の下ではオンラインでの訴え提起や書面提出は認められていません。

 

 この民訴法132条の10や支払い督促のオンライン化は民事訴訟のIT化を検討する際の手がかりや根拠になり得るとは思われます。