【民事訴訟IT化】被告の応訴の意思等の確認の手続等

民事裁判等IT化研究会資料3

第2 各論3(応訴,口頭弁論等)

1 被告の応訴の意思等の確認の手続等

法第139条の規律を改め,次のような制度を導入することについて,どのように考えるべきか。

⑴ 訴えの提起があったときは,裁判長は,相当の期間を定め,被告に対して応訴の意思や和解の意思を明らかにするように命ずることができる。

⑵ 上記⑴の期間内に応訴の意思や和解の意思を明らかにしないときは,裁判所は,原告の申立てにより,口頭弁論を経ないで,決定で,原告の請求を認容することができる。

⑶ 上記⑵の場合を除き,裁判長は,口頭弁論の期日を指定し,当事者を呼び出さなければならない。

⑷ 被告は,上記⑵の決定から2週間以内に異議の申立てをすることができる。

⑸ 裁判所は,上記⑷の異議が不適法であると認めるときは,決定で異議を却下する。

⑹ 適法な異議申立てがあったときは,上記⑵の決定は効力を失う。この場合には,裁判長は,口頭弁論の期日を指定し,当事者を呼び出さなければならない。

⑺ 上記⑵の決定に対し異議申立てがないとき,又は上記⑷の異議の申立てを却下する決定が確定したときは,上記⑵の決定は,確定判決と同一の効力を有する

 

【現行民事訴訟法139条】

(口頭弁論期日の指定)

 

第139条
 訴えの提起があったときは、裁判長は、口頭弁論の期日を指定し、当事者を呼び出さなければならない。

 

 民訴法139条は、訴えの提起があったときは,裁判長は,口頭弁論の期日を指定し,当事者を呼び出さなければならないとしています。通常は訴え提起から概ね一・二か月後に第1回口頭弁論期日が指定されます。

 

 この第1回口頭弁論期日では,被告が請求の趣旨を争う旨を記載した答弁書を提出せず、口頭弁論期日にも出頭せずに「欠席判決」で終結する事件も一定数あり、また、被告が請求の趣旨を争う旨を記載した答弁書を提出するものの第1回口頭弁論期日には被告は出頭せず答弁書の「擬制陳述」で終わることも多くあります。実務においては、第1回口頭弁論期日が形骸化している面もあります。

 

 そこでIT化された民事訴訟においては、第1回口頭弁論期日を実質的な議論の場とするために,訴えの提起があった場合には,被告の応訴意思の確認手続を第1回口頭弁論期日前に設けて、被告の応訴意思や和解意思を確認することとし,これらの意思が確認することができた場合には,被告と期日を調整した上,第1回口頭弁論期日を指定することとし,一方で,被告の応訴意思等が確認できない場合には,より簡易な手続で訴訟を終了させる制度を設けることが提案されています。

 

 

 そして応訴意思等が確認できない場合には、口頭弁論を経ないで原告の請求を認容することができる「簡易認容制度」についても提案されています。

 この「簡易認容制度」とこれに対する異議申立手続(手続保障)については、調停に代わる決定(民事調停法17条)や労働審判(労働審判法20条)が参照されています。

 

 もっとも、近時は司法機関を騙る振り込め詐欺や架空請求などが横行しており、身に覚えのない書類については、これに安易に回答をしないことが呼びかけられています。訴状の送達や裁判所からの書類を誤って放置してしまうこともないわけではありません。簡易認容制度のみならず、現行の欠席判決についても、執行力は容認するとしても、既判力による遮断効を維持することが適当であるのか(例えば、消滅時効や取消・解除などの主張が可能であったにも関わらず、これを主張せずに簡易認容制度や欠席判決により請求が認容の決定・判決が確定した場合に、請求異議や後訴においてこれらの抗弁事由等を一切主張することが許されないとすることが適当であるのか)については検討の余地があるようにも思われます。