各論4(争点整理手続き等)
第2. 書面による準備手続について
1.書面による準備手続を維持すべきか
仮に,弁論準備手続における一方当事者出頭要件を廃止することとした場合でも,書面による準備手続については,維持することでよいか。
2.書面による準備手続を行うための要件について
書面による準備手続を行うための要件を改め,「弁論準備手続を利用することができないとき【その他相当と認めるとき】」とすることについて,どのように考えるべきか(法第175条関係)。
3.ウェブ会議,テレビ会議又は電話会議を用いた協議について
ウェブ会議,テレビ会議又は電話会議を用いて協議をすることができる旨の規律(法第176条第3項)を削除することについて,どのように考えるべきか。
4.受命裁判官の関与について
現行法においては,高裁に限り,受命裁判官が関与することができることとされているが,地裁の裁判官についても受命裁判官として関与することを認めることについて,どのように考えるべきか(法第176条1項ただし書関係)。
【現行民事訴訟法】
第三款 書面による準備手続
(書面による準備手続の開始)
第175条
裁判所は、当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、事件を書面による準備手続(当事者の出頭なしに準備書面の提出等により争点及び証拠の整理をする手続をいう。以下同じ。)に付することができる。
(書面による準備手続の方法等)
第176条
1.書面による準備手続は、裁判長が行う。ただし、高等裁判所においては、受命裁判官にこれを行わせることができる。
2.裁判長又は高等裁判所における受命裁判官(次項において「裁判長等」という。)は、第百六十二条に規定する期間を定めなければならない。
3.裁判長等は、必要があると認めるときは、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、争点及び証拠の整理に関する事項その他口頭弁論の準備のため必要な事項について、当事者双方と協議をすることができる。この場合においては、協議の結果を裁判所書記官に記録させることができる。
4.第百四十九条(第二項を除く。)、第百五十条及び第百六十五条第二項の規定は、書面による準備手続について準用する。
(証明すべき事実の確認)
第177条
裁判所は、書面による準備手続の終結後の口頭弁論の期日において、その後の証拠調べによって証明すべき事実を当事者との間で確認するものとする。
(書面による準備手続終結後の攻撃防御方法の提出)
第178条
書面による準備手続を終結した事件について、口頭弁論の期日において、第百七十六条第四項において準用する第百六十五条第二項の書面に記載した事項の陳述がされ、又は前条の規定による確認がされた後に攻撃又は防御の方法を提出した当事者は、相手方の求めがあるときは、相手方に対し、その陳述又は確認前にこれを提出することができなかった理由を説明しなければならない。
現行民事訴訟法は争点整理手続の1つとして書面による準備手続を設けているが,実務上はそれほど利用されていないように思われます。双方不出頭の弁論準備手続(拙稿「【民事訴訟IT化】弁論準備手続について」参照)が採用される場合に,なお書面による準備手続を維持するかが検討課題となりますが,資料では,ウェブ会議等を利用できない刑事施設収容者等においてはなおニーズがあると思われるとされています。もっとも刑事収容者の裁判を受ける権利を保障するためには,ウェブ会議等を利用できる態勢をつくることも検討されるべきと思われます。資料では,その他,遠隔地要件の削除や,裁判長による主宰の維持の要否などについて論点提示されています。
なお、民事訴訟規則60条1項は第1回口頭弁論期日前に(当事者の異議に関わらず)書面による準備手続に付することができることを前提とした規定を定めています。
【民事訴訟規則】
(最初の口頭弁論期日の指定・法第百三十九条)
第60条
1.訴えが提起されたときは、裁判長は、速やかに、口頭弁論の期日を指定しなければならない。ただし、事件を弁論準備手続に付する場合(付することについて当事者に異議がないときに限る。)又は書面による準備手続に付する場合は、この限りでない。
2.前項の期日は、特別の事由がある場合を除き、訴えが提起された日から三十日以内の日に指定しなければならない。