【民事訴訟IT化】専門委員制度について

民事裁判等IT化研究会資料4-1

各論4(争点整理手続き等)

第4  専門委員制度について

現行法上,専門委員がウェブ会議等を利用して関与するためには,「専門委員が遠隔の地に居住しているときその他(裁判所が)相当と認めるとき」に利用することができることとされているが,現行法のとおり裁判所の裁量的判断に委ねることでよいか(法第92条の3関係)。

 

【現行民事訴訟法】

第二節 専門委員等
第一款 専門委員
(専門委員の関与)
第92条の2
1.裁判所は、争点若しくは証拠の整理又は訴訟手続の進行に関し必要な事項の協議をするに当たり、訴訟関係を明瞭にし、又は訴訟手続の円滑な進行を図るため必要があると認めるときは、当事者の意見を聴いて、決定で、専門的な知見に基づく説明を聴くために専門委員を手続に関与させることができる。この場合において、専門委員の説明は、裁判長が書面により又は口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日において口頭でさせなければならない。
2.裁判所は、証拠調べをするに当たり、訴訟関係又は証拠調べの結果の趣旨を明瞭にするため必要があると認めるときは、当事者の意見を聴いて、決定で、証拠調べの期日において専門的な知見に基づく説明を聴くために専門委員を手続に関与させることができる。この場合において、証人若しくは当事者本人の尋問又は鑑定人質問の期日において専門委員に説明をさせるときは、裁判長は、当事者の同意を得て、訴訟関係又は証拠調べの結果の趣旨を明瞭にするために必要な事項について専門委員が証人、当事者本人又は鑑定人に対し直接に問いを発することを許すことができる。
3.裁判所は、和解を試みるに当たり、必要があると認めるときは、当事者の同意を得て、決定で、当事者双方が立ち会うことができる和解を試みる期日において専門的な知見に基づく説明を聴くために専門委員を手続に関与させることができる。
(音声の送受信による通話の方法による専門委員の関与)
第92条の3
 裁判所は、前条各項の規定により専門委員を手続に関与させる場合において、専門委員が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、同条各項の期日において、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が専門委員との間で音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、専門委員に同条各項の説明又は発問をさせることができる。
(専門委員の関与の決定の取消し)

第92条の4

 裁判所は、相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、専門委員を手続に関与させる決定を取り消すことができる。ただし、当事者双方の申立てがあるときは、これを取り消さなければならない。

専門委員の指定及び任免等)
第92条の5
1.専門委員の員数は、各事件について一人以上とする。
2.第九十二条の二の規定により手続に関与させる専門委員は、当事者の意見を聴いて、裁判所が各事件について指定する。
3.専門委員は、非常勤とし、その任免に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
4.専門委員には、別に法律で定めるところにより手当を支給し、並びに最高裁判所規則で定める額の旅費、日当及び宿泊料を支給する。
(専門委員の除斥及び忌避)
第92条の6
1.第二十三条から第二十五条まで(同条第二項を除く。)の規定は、専門委員について準用する。
2.専門委員について除斥又は忌避の申立てがあったときは、その専門委員は、その申立てについての決定が確定するまでその申立てがあった事件の手続に関与することができない。

 

(受命裁判官等の権限)
第92条の7
 受命裁判官又は受託裁判官が第九十二条の二各項の手続を行う場合には、同条から第九十二条の四まで及び第九十二条の五第二項の規定による裁判所及び裁判長の職務は、その裁判官が行う。ただし、第九十二条の二第二項の手続を行う場合には、専門委員を手続に関与させる決定、その決定の取消し及び専門委員の指定は、受訴裁判所がする。

 

 

 

 民事訴訟法92条の2以下では、訴訟関係を明瞭にし、又は訴訟手続の円滑な進行を図るため必要があると認めるときは、専門的な知見に基づく説明を聴くために専門委員を手続に関与させることができるとする「専門委員制度」を定めています。現在の実務でも建築紛争などにおいて専門委員が活用されています。

 そして同法92条の3は、専門委員が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法による関与を定めておりますが、IT化された民事訴訟手続においても引き続き専門委員がウェブ会議等を利用した関与ができるように同様の規律を維持することが提案されています(「遠隔の地に居住しているとき」という「例示」を削除すべきかについては他と同様の議論があります)。