【民事訴訟IT化】調書の在り方について

民事裁判等IT化研究会資料4-1

各論4(争点整理手続き等)

第5 調書の在り方について

 口頭弁論調書や弁論準備手続調書の作成について,IT技術を活用すること について,どのように考えるべきか。

 

【現行民事訴訟法】

(口頭弁論調書)
第160条
1 裁判所書記官は、口頭弁論について、期日ごとに調書を作成しなければならない。
2 調書の記載について当事者その他の関係人が異議を述べたときは、調書にその旨を記載しなければならない。

 

3 口頭弁論の方式に関する規定の遵守は、調書によってのみ証明することができる。ただし、調書が滅失したときは、この限りでない。
【現行民事訴訟規則】
(口頭弁論調書の形式的記載事項・法第百六十条)
第66条
1.口頭弁論調書には、次に掲げる事項を記載しなければならない
一 事件表示
二 裁判官及び裁判所書記官氏名
三 立ち会った検察官氏名
四 出頭した当事者代理人補佐人及び通訳人氏名
五 弁論の日時及び場所
六 弁論公開したこと又は公開しなかったときはその及びその理由
2.前項調書には、裁判所書記官記名押印し、裁判長が認印しなければならない
3.前項の場合において裁判長に支障があるときは、陪席裁判官その事由を付記して認印しなければならない裁判官に支障があるときは、裁判所書記官その旨を記載すれば足りる
(口頭弁論調書の実質的記載事項・法第百六十条)
第67条
1.口頭弁論調書には、弁論の要領を記載し、特に、次に掲げる事項を明確にしなければならない
一 訴え取下げ和解請求の放棄及び認諾並びに自白
二 第百四十七の三(審理の計画)第一審理の計画が同規定により定められ、又は第四規定により変更されたときは、その定められ、又は変更された内容
三 証人当事者及び鑑定人陳述
四 証人当事者及び鑑定人の宣誓の有無並びに証人及び鑑定人に宣誓をさせなかった理由
五 検証の結果
六 裁判長が記載を命じた事及び当事者請求により記載を許した事
七 書面を作成しないでした裁判
八 裁判言渡し
2。前項規定にかかわらず、訴訟が裁判によらないで完結した場合には、裁判長許可を得て、証人当事者及び鑑定人陳述並びに検証の結果の記載を省略することができるただし、当事者が訴訟の完結を知った日から一週間以内にその記載をすべき旨の申出をしたときは、この限りでない
3.口頭弁論調書には、弁論の要領のほか、当事者による攻撃又は防御の方提出の予定その訴訟手続の進行に関する事を記載することができる
(調書の記載に代わる録音テープ等への記録)
第68条
1.裁判所書記官は、前条口頭弁論調書実質的記載事)第一規定にかかわらず、裁判長許可があったときは、証人当事者又は鑑定人以下「証人等」という。)の陳述を録音テープ又はビデオテープ(これらに準ずるにより一定の事記録することができるを含む。以下「録音テープ等」という。)に記録し、これをもって調書の記載に代えることができる。この場合において、当事者は、裁判長許可をする際に、意見を述べることができる。
2.前項の場合において、訴訟が完結するまでに当事者申出があったときは、証人等の陳述を記載した書面を作成しなければならない。訴訟が上訴審係属中である場合において、上訴裁判所が必要があると認めたときも、同様とする
(書面等の引用添付)
第69条
  口頭弁論調書には、書面、写真、録音テープ、ビデオテープその裁判所において適当と認めるものを引用し、訴訟記録添付して調書の一部とすることができる
  現行民事訴訟法160条は、口頭弁論については期日ごとに調書を作成しなければならないとのみ定め、その記載内容については,民事訴訟規則において形式的記載事項(規則66条)・実質的記載事項(規則67条)について定められており、このうち実質的記載事項については,裁判長の許可があった場合には,証人・当事者等の陳述を録音テープ等に記録し,これをもって調書の記載に代えることができることとしています(規則68条1項前段)。
  資料4-1・14頁以下では、IT化された民事裁判においては、録音・録画を電子化された事件記録にリンクすることも可能であり、録音等による記録を原則とし文字化しないということが考えられる一方で,文字化された情報は全体を短時間で俯瞰することが容易であり、発言を正確に引用する際には,その結果が文字化されている方が便利であること、上訴審を担当する裁判官においても口頭弁論期日の内容を把握するために 全ての録音・録画画像を見直さなければならないというのは相当の負担であること、また自由闊達な議論が阻害されることから、口頭弁論調書等の作成については,現行の規律を基本的には維持しつつ,調書を作成するに当たりIT技術を活用し,その作成の負担を軽減するという方向も考えられると、2つの方向性が示されています。
  
  録音・映像の確認の負担と正確な引用の確保からは、IT化された民事裁判においても文字化が引き続き原則となるべきと考えます。もっとも録音・映像は、例えば上訴審において前審における証人尋問の雰囲気を再確認することなどが可能となり、文字では伝わらないニュアンスの確認を可能とするなど活用の余地はあり、2つの方向性は二者択一ではないようにも思われます。