民事訴訟手続IT化フェーズ1の運用開始

 最高裁より日弁連に対し「民事訴訟手続IT化に係るフェーズ1の運用を開始する日時等について」と題する文書が通知されました。

 令和2年2月3日より、9つの高裁所在地の地裁本庁と知財高裁において、マイクロソフトチームズを用いたウェブ会議による弁論準備手続(書面による弁論準備手続・進行協議)が行われることとなります(メールアドレスの聴取・チームの作成・メッセージ機能の利用等は同年1月27日(月)から)。

 その後、さらに5月頃より神戸地裁本庁などに運用が拡大することになります。 

 実施庁以外の地方の弁護士であっても、東京地裁や大阪地裁などの実施庁に受任事件が係属することは当然ありえますので、実施庁の管轄下に事務所があるか否かに関わらず全国の弁護士はIT化への対応が必要となります。もっとも、準備書面・書証等は従来通り「紙」で送達をすることが必要ですので、まさにIT化の第一歩にすぎないとも言えます。

 他方で、民事訴訟手続という司法権の重要な運用が、一民間事業者のシステムに依拠していることにセキュリティその他の懸念の声も聞かれます(フェーズ3までには裁判所がシステムを構築するとされています)。また、裁判官や相手方と直接対峙することで、裁判官に直接接し、主張・立証に理解を求め、また裁判官の心証を読み取ることは法廷技術としても、事案の解明・真実発見にとっても重要と思われるところ、口頭主義・直接主義あるいは裁判を受ける権利が形骸化しないかとの点にも留意が必要です。