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クレジットの抗弁対抗と信義則

 分割払いのクレジットで商品の購入やサービスの提供を受けた後に、商品に欠陥があったり、サービスの提供が中止した場合には、消費者はクレジット代金の支払いを停止することが可能です。支払い停止をするためには、クレジット会社に支払い停止通知書を送付することになります(一般社団法人日本クレジット協会「支払停止等の抗弁に関する手続きについて(ご案内)」)。

 商品購入に付随するサービス(役務)の停止についても支払い停止の抗弁事由となります。

 ところが、クレジット会社からはモニター料を受け取っており利得があるとか、電話確認の際に付随するサービスについて告げられなかったことなどをもって、消費者側の落ち度とし、支払い停止の抗弁を主張することは信義則に違反すると主張されることがあります。

 しかし、他方で、クレジット会社は、問題のある商法を行う販売店を加盟店としてクレジットを利用させ手数料を得ています。販売店もお客さんの利益よりもクレジット会社より立替金を受け取ることを目論んでいます。クレジット会社と販売店は加盟店契約を通じて共に利益を得る関係となり、また、悪質加盟店がクレジットシステムに入り込むリスクが内在することになります。「悪質商法を支えるクレジット」と呼ばれることもあります。

 そこで割賦販売法はクレジット会社に加盟店の審査義務(加盟店管理責任・適正与信義務)を定めております(参考:国民生活「個別信用購入あっせん(1)-要件、行政規制-」)。クレジット会社がこの適正与信義務を果たさずに、安易に加盟店契約をして販売店の問題のある商法を助長しておきながら、消費者の落ち度だけを指摘することには前提に問題があります。そうすると、原則通り、支払い停止の抗弁は認められなければなりません(参考:国民生活「個別信用購入あっせん(2)-民事ルール(1)-)。

 電話確認で、商品販売に付帯するサービスについて告げなかったからといって、その一事をもって信義則に違反することにはならないと考えます。クレジット会社が果たして適正与信義務を尽くしていたのかがまずは厳しく問われなければなりません。

 さらに、割賦販売法あるいは特定商取引法のクーリングオフや取消権の行使の可能性も検討し、支払い停止のみならず既払い金の返還請求の可能性も検討できる事案もあり得るところです。