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賃金等請求権の消滅時効期間が当分の間3年に

 厚生労働省労働政策審議会に令和2年1月10日付で厚生労働大臣より労働基準法の一部を改正する法律案要綱が諮問されました。同審議会労働条件分科会は令和元年12月27日に賃金等請求権の消滅時効期間の在り方について(建議)を取りまとめていましたが、これを受けたものです。

 要綱は以下のとおりです。

労働基準法の一部を改正する法律案要綱

第一 労働者名簿等の書類の保存期間の延長

労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類(以下「労働者名簿等」という。)の保存期間について、五年間に延長することとすること。

第二 付加金の請求を行うことができる期間の延長

付加金の請求を行うことができる期間について、違反があった時から五年に延長することとすること。

第三 賃金請求権の消滅時効期間の見直し等

賃金(退職手当を除く。)の請求権の消滅時効期間を五年に延長するとともに、消滅時効の起算点について、請求権を行使することができる時であることを明確化すること。

第四 経過措置

第一から第三までによる改正後の労働基準法第百九条、第百十四条及び第百十五条の規定の適用についいて、労働者名簿等の保存期間、付加金の請求を行うことができる期間及び賃金(退職手当を除く。)の請求権の消滅時効期間は、当分の間、三年間とすること。

第五 施行期日等

一 施行期日

この法律は、民法の一部を改正する法律の施行日(令和二年四月一日)から施行すること。

二 経過措置

この法律の施行前に労働基準法第百十四条に規定する違反があった場合の付加金の請求期間及び賃金(退職手当を除く。)の支払期日が到来した場合の当該賃金の請求権の消滅時効の期間についてはなお従前の例によることとすること。

三 検討

 

政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律による改正後の規定について、その施行の状況を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。

 

 これまで賃金等請求権は労基法上2年が消滅時効期間とされていました。これは民法の職業別短期消滅時効の規定において「使用人の給料に係る債権」は1年とされていた(旧民法174条1号)ところ、労働者の保護のためにこれを長期化したものとされていました。

 しかし、令和2年4月1日施行の改正民法では職業別短期消滅時効の規定は削除され、債権の消滅時効期間は客観10年・主観5年に統一されることとなりました(新民法166条1項)。そうすると、労基法上の2年の賃金等請求権の消滅時効期間が民法よりも短期となるという逆転現象が生じ、労働者保護という説明がつかないことになります。

 そこで、労政審において賃金等請求権の消滅時効期間の在り方について検討がなされてきたものですが、要綱では消滅時効期間を5年とする(ただし客観的基準で5年です)、もっとも「当分の間」は3年とするという案が示されております。これは賃金等請求権、特に未払残業代等の管理をめぐり使用者側から一気に5年とすることについての種々の懸念があったことへの配慮と思われます。この「当分の間」は見直し規定との関係を見ると5年の間がイメージされていると思われます。

 なお、施行は改正民法の施行日である本年4月1日とされていますが立法が間に合うかも注目されます。

 施行日前に締結された労働契約に基づく賃金等請求権についても施行日後に支払期日が到来したものについては3年の消滅時効期間となります(労務の提供が施行日前でも、支払期日が施行日後であれば3年になると思われます)。