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宿泊契約のキャンセル料と不当条項について

 昨今の新型コロナウイルスの影響により旅行等を見合わせることも残念ながらあろうかと思います。また東京オリンピック・パラリンピックの延期に伴う宿泊予約のキャンセルの問題も生じているようです。

 観光庁モデル宿泊約款を提示しておりますが,宿泊客の契約解除権6条で引用される別表第2では「20日前」「9日前」「前日」「当日」「不泊」に分けて基本宿泊料に対する違約金の比率を定める様式となっております。消費者とホテルとの宿泊契約も消費者契約に該当し,消費者契約法に規律されます。同法10条は「消費者の利益を一方的に害する条項の無効」としていますし,同法9条1号は平均的な損害を超える損害賠償の額を予定する条項の無効を定めています。従いまして,宿泊日よりも相当の期間をおいてキャンセルをしたにも関わらず,違約金を宿泊料の100%とする条項や一切既払い金を返還しない条項は不当条項として平均的損害を超える部分は無効となるものと考えられます。

 全国消費生活相談員協会消費生活相談員のための判例紹介には,手配旅行契約における取消料について、旅館のホームページ上に記載された取消料が、直ちに消費者契約法9条1号にいう「平均的な損害」とはならず、解除事由、時期に従い、事業者に生ずべき損害の内容、損害回避の可能性等に照らし具体的に判断すべきとしたうえで、取消料の一部を同条により無効とした判決(東京地方裁判所平成23年11月17日 判決平成23年(レ)第26号 不当利得返還請求控訴事件(原審:東京簡易裁判所 平成22年(ハ)第47740号))について

小松良匡弁護士(東京弁護士会)が解説をなされています(146号)。

 特定適格消費者団体消費者機構日本は,2019年10月30日付けで「~宿泊業界団体への要請~東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催期間を含む一定期間の宿泊契約のキャンセル料水準について調査・指導を求めました~」とする申し入れ活動を公表しております。また2020年3月23日付けで(株)三井不動産ホテルマネジメントに対する申し入れ活動において東京オリンピック・パラリンピック競技大会期間を伴う期間の宿泊契約のキャンセル料(全額不返還との取扱い)が是正されたことが公表されております

 キャンセル料全額不返還条項はもともと不当条項性が強く疑われる条項ですので泣き寝入りをしないことが大切です。