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【メモ】手形割引の法的性質

 手形割引については、売買であるとして利息制限法の適用を否定した最判昭和48年4月12日があります。この結論部分だけを捉まえて手形割引=売買と表層的に把握しがちですが、最高裁も個別事情を問わずにすべからく手形割引=売買としている訳ではありません。

 最判昭和41年3月15日は「D株式会社と被上告組合との間に行われた所論手形取引は、名は手形割引であるがその性質は消費貸借と認められる旨の原判決の判断は、その認定している事情に照らして是認しえなくはない。また、原判決が、右手形取引は、同時に売買であり、売買と消費貸借が併存しうるとの見解を示していることは、論旨指摘のとおりであるが、原判決の右見解は、結論に影響のない傍論にすぎないものと解されるから、論旨前段は採用することができない。

 また、原判決の要物性充足についての判断の根拠は必らずしも明らかではないが、その認定事実によれば、被上告組合は手形金額から割引料(満期までの一定率による金額)を差し引き残額(割引金)を前記訴外会社に交付しているのであるから、右は、一般の消費貸借において、名目元本に対する一定期間の利息を天引して残金を交付した場合と同断であつて、要物性は名目元本(この場合は手形金額)全額について存するものと認めるのが相当である。したがつて、手形金額について要物性を充たす旨の原判決の判断は、結論において正当であるから、論旨後段もまた採用するに値しない。」と判示して、手形割引を消費貸借とした原判決を維持しています。

 また、最判昭和51年11月25日は「そうして、今日の銀行取引において行われる手形割引は、割引手形の主債務者の信用が基礎にあるなどの点で、純然たる消費貸借契約とは性質を異にする一面を有するとはいえ、広い意味において割引依頼人に対する信用供与の手段ということができ、割引銀行としては、直接の取引先である割引依頼人に信用悪化の事態が生じた場合には、その資金の早期かつ安全な回収をはかろうと意図することは自然かつ合理的であり、その回収の手段として、一定の場合に、割引手形の満期前においても割引手形買戻請求権が発生するものとするとの事実たる慣習が形成され、全国的に採用されている定型的な銀行取引約定の中にその旨が明文化されるに至つていることは、公知の事実である」としています。

 判例は銀行取引における手形割引とそれ以外が行う手形割引を区別してきた感もあります。いずれにしても個別事情の検討なしに、機械的に手形割引=売買としてはならない点に留意すべきです。

 手形割引の法的性質については後藤紀一広島大学法科大学院教授の「手形割引の法的性質と貸金業者の期限の利益喪失条項の効力 <論説> (広島法科大学院論集3号49頁、2007年3月20日)に詳しく論じられています。