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商品関連市場デリバティブの両建て勧誘規制等

 商品先物取引被害においては「両建て」(売建玉と買建玉を同時にさせる)という「客殺し」と指摘されることもある手法が業者により行われることがありました。そこで商品先物取引法は両建て勧誘を禁止しています(214条8号・同法施行規則103条9号等)。また向かい玉を禁止するとともに(施行規則103条2号)、差玉向かい玉の説明義務が定められています(同条21号)。

 

 総合取引所における商品関連市場デリバティブについて金融商品取引法は法律事項として両建て禁止は直接定めておりませんが、金融商品取引業等に関する内閣府令117条35号以下において商品関連市場デリバティブ取引について両建て勧誘の禁止・両建てに類する取引の受託の禁止・向かい玉の禁止や差玉向かいの説明義務が定められています(35号以下)。

 

三十五 商品関連市場デリバティブ取引の受託等につき、顧客(特定投資家を除く。)に対し、当該顧客が行う商品関連市場デリバティブ取引の売付け又は買付けその他これに準ずる取引とこれらの取引と対当する取引(これらの取引から生じ得る損失を減少させる取引をいう。)の数量及び期限を同一にすることを勧める行為
三十六 商品関連市場デリバティブ取引の売付け又は買付けその他これに準ずる取引と対当する取引(これらの取引から生じ得る損失を減少させる取引をいう。)であってこれらの取引と数量又は期限を同一にしないものについて、その取引を理解していない顧客(特定投資家を除く。)から受託等をする行為
三十七 商品関連市場デリバティブ取引の委託等を受け、故意に、当該委託等に係る取引と自己の計算による取引を対当させて、顧客の利益を害することとなる取引をする行為

 

三十八 顧客から商品関連市場デリバティブ取引の委託等を受けようとする場合において、金融商品取引業者等が当該委託等に係る商品又は商品に係る金融指標及び期限が同一であるものの取引について、故意に、顧客の取引と自己の計算による取引を対当させる取引(以下この号において「特定取引」という。)を行っているにもかかわらず、当該委託等に係る顧客に対し、あらかじめ、次に掲げる事項を説明しないで、受託等をする行為
イ 特定取引を行っている旨
ロ 特定取引によって当該委託等に係る取引と当該金融商品取引業者等の自己の計算による取引が対当した場合には、当該委託等に係る顧客と当該金融商品取引業者等との利益が相反するおそれがある旨

 

 ※ 加藤進一郎弁護士(京都・木内総合法律事務所)にご教示いただきました。