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特定商取引法・預託法改正法の成立

 定期購入・送りつけ商法やオーナー商法などの消費者被害を防止するために審議されていた消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律案が令和3年6月9日に参議院で可決され成立しました。

 ・参議院議案情報

 同法案の提出時の法律案等は消費者庁のHPにあります。

 

 同法案は衆議院において一部修正の上で令和3年5月18日に可決されていました。

 ・衆議院議案審議経過情報

 ・議案

 ・提出時法律案

 ・修正案1:第204回提出(可決)

 

 参議院地方創生及び消費者問題に関する特別委員会では,消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議 (令和3年6月4日)がなされた上で,同月9日に参議院にて可決となり,法案は成立しました。

 附帯決議は以下の内容です。

 政府は、本法の施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずるべきである。

一 書面交付の電子化に関する消費者の承諾の要件を政省令等によ  り定めるに当たっては、消費者が承諾の 意義・効果を理解した上で真意に基づく明示的な意思表明を行う場合に限定されることを確保するため、事業者が消費者から承諾を取る際に、電磁的方法で提供されるものが契約内容を記した重要なものであることや契約書面等を受け取った時点がクーリング・オフの起算点となることを書面等により明示的に示すなど、書面交付義務が持つ消費者保護機能が確保されるよう慎重な要件設定を行うこと。ま た、高齢者などが事業者に言われるままに本意でない承諾をしてしまうことがないよう、家族や第三者の関与なども検討すること。

二 書面交付の電子化に関する承諾の要件を検討するに当たっては、悪質業者の手口や消費者被害の実態を十分に踏まえた上で、学識経験者、消費者団体、消費生活相談員等の関係者による十分な意見交換を尽 くすこと。

三 デジタル機器に不慣れな高齢者や障がい者が、デジタル技術を利用した新手の消費者取引のトラブルや 悪質業者による訪問販売等の被害に遭うことを効果的に防止・救済するため、きめ細かな情報提供や見 守りネットワークによる声掛け体制の整備を地方公共団体において一層強力に展開できるよう、消費者 庁は財政措置を含む実効性ある措置を講ずること。

四 デジタル機器に慣れていてもトラブルに巻き込まれやすい若年者に対し、デジタル技術を利用した新手 の取引被害や悪質業者による連鎖販売取引の被害を効果的に防止・救済するため、成年年齢引下げの施行時期が令和四年四月一日に迫っていることを踏まえ、実践的な消費者教育を強力に展開するとともに、若年者に対するクレジット・ローンの過剰与信を防止する業界の自主的取組の効果を検証し、必要 に応じ更なる法的措置を検討すること。 五消費者トラブルの防止・救済におけるクーリング・オフ制度の重要性に鑑み、電子メール等によるクー リング・オフ通知の発信方法及び効果について、消費者及び事業者に対し十分な周知策を講ずること。

六 詐欺的定期購入トラブルの防止・救済に向けて導入された、特定申込みに係る申込画面の表示事項の 義務付け及び誇大広告の禁止について、定期購入契約のうち初回分の価格・数量等と二回目以降の価格・数量等をことさら分離して表示する手口など、不適正な表示方法の具体例と判断の目安を通達等に 具体的に明示すること。

七 詐欺的定期購入トラブルが急増している事態に鑑み、現行法下における広告画面や申込確認画面につい ても、誤認を招きやすい表示方法の具体例を通達等の見直しにより早急に明示すること、並びに悪質業 者に対する法執行を一層強化することに取り組むこと。

八 送り付け商法により注文がないのに一方的に送り付けられた商品は、消費者が直ちに処分しても代金 支払義務や損害賠償責任を負わないことを分かりやすく消費者に周知すること。

九 関係省庁は、特定商品等の預託等取引契約に関する法律と金融商品取引法や出資の受入れ、預り金及び 金利等の取締りに関する法律との間に隙間が生じないよう連携して対応すること。

十 関係省庁が連携して預託等取引業者の不法な目的に基づいて行われた事案の把握に努め、そのような事 案を把握したときは、速やかに既に生じた被害救済及び被害防止のための措置を講ずること。また、預託等取引による被害拡大及び被害防止のための方策を具体的に検討し、本法施行後五年を目途として、 本法の実効性について検証を行い、必要な措置を講ずること。

十一 これまで販売預託商法等によって多数の消費者被害が生じていることに鑑み、加害者の不当な収益をはく奪し被害者を救済する制度、行政庁及び特定適格消費者団体による破産申立制度並びに行政庁によ る解散命令制度の創設や、過去の被害事案の救済のための措置について、消費者裁判手続特例法の運用 状況の多角的な検討を踏まえて、必要な検討を行うこと。

十二 消費者トラブルの防止・救済の相談窓口である全国の消費生活センターにおいて、資格を有する消費 生活相談員の人材確保が困難となっている現状を踏まえ、消費者庁は国又は地方公共団体における消費 生活相談員を目指す人材の養成講座の開催等の施策を推進するよう予算措置を始めとする十分な措置を講ずること。

十三 政府は、訪問販売や電話勧誘販売における高齢者・障がい者の消費者被害を抜本的に予防するため、 幅広く対応策を検討すること。

 右決議する。

 

 特定商取引法改正については,書面の電子化の容認によるクーリングオフ権の行使など消費者保護機能の後退が大きな問題となっていましたが,法案は賛成多数で可決となりました。今後,政省令において具体的な手続が定められることとなりますが,上記附帯決議を踏まえて,電子化については厳格な手続が求められます。他方で,取引の電子化というのであれば,悪質商法の温床である訪問・電話勧誘そのものを禁止(不招請勧誘禁止)とすべきです。訪問販売を許しながら,対面勧誘を受けているのに,書面だけ電子化というのは本末転倒です。