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日弁連「超高齢社会において全ての消費者が安心して安全に生活できる社会の実現を推進する決議」

 日弁連は2021年10月14日に第63回日本弁護士連合会人権擁護大会シンポジウム第2分科会 「超高齢社会における消費者被害の予防と救済を考える~誰一人取り残さない社会をめざして~」を開催し,これを受けて,翌15日に「超高齢社会において全ての消費者が安心して安全に生活できる社会の実現を推進する決議」を公表しています。

 同決議では,国などに対し以下の施策を求めています。

 

1 国は、消費者被害の予防及び救済のために、以下の法制度を整備すること。

 (1)民事ルールの整備として、事業者が消費者の判断力の不足等に乗じて契約を締結した場合に、消費者に取消権を認めるとともに、事業者により信義則に反する勧誘がなされた場合における取消権の一般条項(受皿規定)を導入すること。


 (2)消費者が不意打ち的な勧誘をあらかじめ回避できるよう、訪問勧誘及び電話勧誘を事前に包括的に拒否できる制度を導入すること。

 

 (3)消費者取引の公正を広く確保するために、取引類型や広告・勧誘の場面に限定されない、横断的な行政ルールを整備すること。

 

 (4)適格消費者団体が行う差止請求及び集団的被害回復訴訟の制度をより実効的なものとする法整備を行うとともに、特定適格消費者団体による破産申立ての制度を導入すること。また、これらを経済的に支援する制度を実現すること。

 

 (5)行政による破産手続開始申立て、事業者の財産の保全、被害回復の諸制度を検討し、整備すること。

 

2 国及び地方公共団体は、消費者被害の予防・早期発見・救済を目的とする消費者支援のための見守りネットワーク作りを推進するために、以下の措置を講じること。

 (1)地方公共団体(特に市区町村)は、消費生活部門、福祉部門、防犯部門及び防災部門との連携を確保しつつ、地域の関係者の幅広い参加及び個人情報の有効かつ適正な活用により、実効的な見守り活動を推進していくこと。

 

 (2)国及び都道府県は、市区町村が行う見守り体制の整備及び人材養成等への支援をより強化すること。国においては、これらの施策を推進するための研修・情報提供及び財源上の措置を十分に講じること。

 

 (3)地方公共団体は、福祉分野における権利擁護・意思決定支援の観点からの総合的な支援の仕組み作りを進め、消費者支援のための見守りネットワーク作りの推進をその一環と位置付けて行うこと。また、国はその支援を行うこと。

 

 (4)国及び地方公共団体は、消費者支援のための見守りネットワーク作りの推進を、「地域共生社会」、「地域福祉」及び「消費者市民社会」の理念をも踏まえ、地域コミュニティ作りの一環と位置付けて行うこと。

 

3 国及び地方公共団体は、現行の成年後見制度の利用にあっては、本人の意思決定を支援するための運用をより徹底しつつ、同制度を消費者被害の予防・救済に利用し、併せて、権利擁護及び地域福祉に関する他の施策との連携を促進していくこと。

 

4 国及び地方公共団体は、特殊詐欺等による被害の防止及び被害回復のための措置・取組をより一層強化すること。特に、地方公共団体においては、特殊詐欺等の防止に関する条例を制定し、地域福祉に関する他の施策との連携を図りつつ、地域における事業者・住民等の取組を主導するとともに支援していくこと。

 

5 国は、高齢者等のぜい弱な状況にある消費者が日常生活に必要な取引から排除されることのないよう、消費者に対し積極的な支援を行うとともに、事業者が取引に際して消費者の特性に応じた合理的配慮をすることを徹底するための施策を推進すること。また、事業者による身元保証等のサポート事業については、事業者に対する適切な監督を実施できる法制度を整備すること。