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【大阪弁護士会】「消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律案」に対する会長声明

 大阪弁護士会が令和4年3月11日付で「消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律案」に対する会長声明を公表しています。

 現在,国会では「消費者契約法等の一部を改正する標記の法律案」が審議されています。しかしながら,提出法案には,2018年(平成30年)の消費者契約法改正の前提となった消費者委員会の答申(2017年(平成29年)8月)に付言された喫緊の課題や、同改正に際しての衆議院参議院の消費者問題に関する特別委員会における附帯決議に具体的に応えるために、消費者契約に関する検討会が23回の検討を経て2021年9月に取りまとめた報告書(以下「検討会報告書」という。)が法制化を求めた、困惑類型の受け皿となる脱法防止規定や、高齢者、若年成人、障がい者等の知識・経験・判断力の不足など消費者が合理的な判断をすることができない事情を不当に利用して、事業者が消費者を勧誘した場合における取消権の規定(いわゆるつけ込み型不当勧誘取消権)は盛り込まれていません。また、検討会報告書では、無効となる契約条項として、いわゆるサルベージ条項により消費者の賠償請求を抑制するおそれがある不明確な免責条項、所有権を放棄することとみなす条項、及び、消費者の解約権を制限する条項の3つが提案されていましたが、本改正案には、これらのうち消費者の賠償請求を抑制するおそれがある不明確な免責条項を無効とする旨の規定のみが盛り込まれただけです。さらに、平均的損害についての立証責任の負担軽減策についても、検討会報告書が求めた積極否認の特則の導入が見送られているなど、改正法案は極めて不十分な内容に留まっています。大阪弁護士会の声明は「多発する消費者被害の救済に資するよう、法改正手続は早急に進められるべきであるが、法案の取りまとめに当たって、高齢者や若年者の消費者被害の防止の見地から、本骨子案は根本的に見直されるべきであり、少なくとも、検討会報告書が提案した取消権及び不当条項に関する規定を含むものとすべきである。」としています。

 成年年齢引き下げによる若年者消費者被害への対策を含めて消費者契約法実体法改正の更なる拡充が不可欠です。