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【個人情報保護委員会】破産者等の個人データを違法に提供している事業者に対する命令について

 個人情報保護委員会は令和4年3月23日に「個人情報の保護に関する法律に基づく行政上の対応について」として,破産者等の個人データを違法に提供している事業者に対してウェブサイトを通じた個人データの第三者への提供停止等するよう命令をした旨を公表しました。

 対象となる事業者は、破産手続開始決定等の公告として官報に掲載さ れた破産者等の個人情報をデータベース化した上、当事者の同意を得ない で、同データベースをウェブサイトに掲載して自己以外の者が利用可能な状態に置き、個人データを違法に提供しているとして,個人情報保護法第 23 条第1項に違反するとされています。

 またこのウェブサイトでは、不特定多数人に容易に検索できる方法で、多数の破産者等の個人データが継続的に提供されており、これらの者が人格的・財産的な差別的取扱いを受けるおそれがあるともされています。

 この業者が,命令に従わない場合は,個人情報保護法第 83 条等に係る罰則の適用を求めて 刑事告発がなされる可能性があります。

 かつては,自己破産をして官報に掲載がなされても,紙ベースで検索可能性の無い官報を見る人などほとんどおらず,自己破産の事実は第三者に知られることはまずありませんでした。ところが,官報がインターネット上に掲載されるようになり,これをデータベース化する悪質なサイトが現れるようになってからは,残念ながら破産をした事実がWEB上で検索され,知られてしまう可能性があります。個人情報保護委員会による徹底した取締とともに,官報のインターネット上での掲載をやめること,さらには破産法その他倒産法制において,少なくとも消費者倒産については官報による公告という制度自体を廃止することも検討すべきです。インターネット上で破産の事実が検索可能となってしまうことにより,自己破産等をためらい,多重債務者が再起更生を図る機会が奪われることはあってはなりません。