日弁連は2022年3月18日に「電子的支払手段等の規律の在り方に関する意見書」「第2.2.(3) 暗号資産型の現行法上の位置付けと対応の在り方(意見の趣旨1(4)) 」では、「アルゴリズムにより価値の安定を図る暗号資産型ステーブルコイン」は,必ずしも法定通貨の価値と連動した価値が維持されるとは限らず,価値が急減 した事例もあることから,資金決済法2条6号の「通貨建資産」には該当せず,資金決済法2条5号の「暗号資産」に該当し,暗号資産交換業者として規制されること、 暗号資産交換業者は,不適切な暗号資産を取り扱わないための措置が求められること(暗号資産交換業者に関する内閣府令23条1項5号),取扱暗号資産については金融庁長官への事前届出が求められること(資金決済法63条の3第1項7号・63条の6第1項)と整理しています。
【資金決済法2条】
5 この法律において「暗号資産」とは、次に掲げるものをいう。ただし、金融商品取引法(昭和二十三年法律 第二十五号)第二条第三項に規定する電子記録移転権利を表示するものを除く。
一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
7 この法律において「暗号資産交換業」とは、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいい、「暗号資産の交換等」とは、第一号及び第二号に掲げる行為をいい、「暗号資産の管理」とは、第四号に掲げる行為をいう。
一 暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換
二 前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理
三 その行う前二号に掲げる行為に関して、利用者の金銭の管理をすること。
四 他人のために暗号資産の管理をすること(当該管理を業として行うことにつき他の法律に特別の規定のある場合を除く。)。
8 この法律において「暗号資産交換業者」とは、第六十三条の二の登録を受けた者をいう。
【資金決済法63条の2】
(暗号資産交換業者の登録)
第63条の2
暗号資産交換業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行ってはならない。
その上で、意見書では、暗号資産型ステーブルコインについては、マネー・ローンダリングや詐欺被害等のリスクがより高いこと、
現状のまま暗号資産型の利用が送金等を目的として一般の個人に広がると
きには,投機取引を行う暗号資産利用者のほか,一般の個人がに巻き込まれる事態が広がることになりかねないこと、暗号資産型は,発行者において通貨発行益類似の利益を獲得し得るところ,悪質な事業者や組織の悪用の誘因が大きく,こうした事業者や組織の資金となりかねないこと、金融システムへの悪影響などについて強い懸念が示されています。
また、暗号資産として仲介業者に対する規律しか課すことができないといった法規制上の相違違やこれに基づくリスクの差を正確に理解するのは,より一層困難であり、両デジタルマネー類似型と表面上の機能の類似性に幻惑された 一般の利用者が,規制の差に由来する利用コストの低さや利便性に惹かれて,
暗号資産型をデジタルマネー類似型よりも選好することによる懸念なども示されています。これらの問題点が適切に解決されない限り,利用者の利益を害しないとは言えず,現状では暗号資産型の取扱いについては引き続き慎重であるべきであり,資金決済法上,暗号資産交換業者では取り扱わないこととすべきであるとしています。
(その他利用者保護を図るための措置等)
第23条
1.暗号資産交換業者は、その行う暗号資産交換業に関し、暗号資産交換業の利用者の保護を図り、及び暗号資産交換業の適正かつ確実な遂行を確保するため、次に掲げる措置を講じなければならない。
五 暗号資産の特性及び自己の業務体制に照らして、利用者の保護又は暗号資産交換業の適正かつ確実な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められる暗号資産を取り扱わないために必要な措置