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【日弁連】電子的支払手段等の規律の在り方に関する意見書(その8)

 日弁連は2022年3月18日に「電子的支払手段等の規律の在り方に関する意見書」では,「2 前払式支払手段に関する規律」について,「 (1) 本人確認等の対象とする高額電子移転可能型前払式支払手段の定義・要件につき,簡素かつ明確で利用者が理解しやすいものとするとともに,利用者保護を実効的に図ることができる水準のものとすべきである。」「(2) 譲渡が自由に行われ,送金手段として機能する前払式支払手段については, 為替取引として実効的な規制・監督が確保されるべきである。」としています。

 前払式支払手段の中には,電子ギフト券やスマートフォン決済において価値を電子的に移転することが可能な「電子移転可能型」がありますが,前払式支払手段には,犯罪収益移転防止法の本人確認が求められておらず匿名性を有することから,サクラサイトトラブルや詐欺的投資取引の支払手段に悪用される例もあります。

 意見書では

高額電子移転可能型前払式支払手段の定義・要件については,利用者への分かりやすさやモニタリング・監督の実効性確保の観点から,簡素か つ明確で利用者が理解しやすいものとすべき

・高額電子移転可能型前払式支払手段の金額要件の水準は,利用者保護を実効的に図ることができるものとすべき

・前払式支払手段の利用実態や,消費者被害の実態に鑑みると,1回当たりの譲渡額等が2万円超, 又は,1か月当たりの譲渡額等の累計額が10万円超のものを対象とするこ とを検討すべき

・前払式支払手段の利用者資金の保全は残高の2分の1の水準であ り,発行者が破綻した場合に,利用者に残高の2分の1の額は返金されないおそれがあり,高額の前払式支払手段を利用する場合,発行者破綻時に返金されないリスクも相応に高額となり得るから,前払式支払手段の高額利用に際して,かかるリスクを利用者に知らせることは重要であり,高額電子移転可能 型前払式支払手段に該当する取引を利用者が行う際には,本人確認とともに, 注意喚起を行うべき

・不正利用や消費者被害事案の決済手段として用いられた場合には, 迅速に利用を停止し,被害の発生や拡大を防ぐ必要がある

・行為者を特定し 責任追及と被害回復を行う必要があるところ,弁護士法に基づく照会請求や 裁判所の調査嘱託に対し,発行者等において適切に対応することも求められ,4こうした対応がより実効的に行われるよう運用されるべき

・ 利用者に相手方特定等のための情報の開示請求を認めることを検討すべき

としています。  

 また, 送金手段として用いられる前払式支払手段(為替取引)については,譲渡が自由に行われ換金・返金も自由に行われる場合には,為替取引の機能を有することになり,資金移動サービスとして事業が行われるものと整理することとされているが,前払式支払手段が送金手段として用いられることを放置するときには,利 用者資金の全額保全が求められるはずの送金サービスを,利用者資金を半額の水準しか保全せずに提供していることになり,利用者保護上大きな問題がある,また,本来は低額のものも含めアカウント作成時に本人確認等が必要な送金サービスを,本人確認等を行わずに提供することが可能となる点も問題である,かかる行為は規制の回避であり,公正な競争の観点からも問題があることから,「為替取引」の規制対象として,実効的な規制・監督が行われる必要があるとしています。