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【日弁連】特殊詐欺を典型とする組織犯罪の被害回復に資するために刑事事件記録の閲覧・謄写制度を拡充することを求める意見書

 日弁連は令和4年5月10日付で特殊詐欺を典型とする組織犯罪の被害回復に資するために刑事事件記録の閲覧・謄写制度を拡充することを求める意見書を公表しています。

 振り込め詐欺等の特殊詐欺による被害は後を絶ちません。被害に遭ったも、被害回復は容易ではありません。刑事立件されるのは末端の資力のない受け子・出し子・運び屋などであり、その背後にいる組織上位者の立件に至るとは限りません。

 この意見書は、捜査機関が保有する未開示記録を含む刑事事件記録の閲覧・謄写を容易にすることで、組織上位者に対する損害賠償請求に資することを求めるものです。

 意見書では下記の事項が求められています。

 

 国に対し、特殊詐欺を典型とする組織犯罪(以下「特殊詐欺等組織犯罪」という。)の被害者(以下「組織犯罪被害者」という。)の被害回復に資するため、組織犯罪被害者が、民事訴訟の提起及びその主張・立証の準備として行う刑事事件記録の閲覧・謄写について、以下の措置を講ずることを求める。

 

1 指定暴力団その他の犯罪組織(以下「指定暴力団等犯罪組織」という。)が関与する特殊詐欺等組織犯罪に関し、当該指定暴力団等犯罪組織の最上位層を占める者(以下「上位者」という。)に対する損害賠償請求の要件事実(民法715条1項の使用者責任における使用者性及び事業執行性、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律31条の2の代表者等責任における指定暴力団員性及び威力利用資金獲得行為該当性等)となり得る事実に係る公判不提出記録及び不起訴記録については、組織犯罪被害者が、必要かつ相当な限りにおいて、民事裁判所による文書送付嘱託等の手続を経ることなく閲覧・謄写することができるよう、開示基準の見直し又は必要な立法を行うこと。

 

2 前項の要件事実を基礎付け得る事実(暴力団の組織構造、意思決定過程、上納金制度等)に係る刑事確定訴訟記録について、保管期間の延長(刑事確定訴訟記録法2条3項)を積極的に行うこと。

 

3 組織犯罪被害者が、開示を受けた刑事確定訴訟記録を、当該特殊詐欺等組織犯罪を敢行した指定暴力団等犯罪組織が関与する他の特殊詐欺等組織犯罪の被害者に対し、その被害回復に資するために提供する行為は、刑事確定訴訟記録法6条に違反するものではないことを明確にすること。

 

 

4 組織犯罪被害者が公判不提出記録又は不起訴記録を含む刑事事件記録を円滑・迅速に入手できるよう、検察官による記録管理の方法の見直し、閲覧・謄写事務の効率化、組織犯罪被害者に対する当該記録の有無及び概要に関する情報の教示の積極的な実施等を行うこと。