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日本銀行法のちょっとしたおさらい

 日本銀行は,日本銀行法に基づいて設立された認可法人です(5条)。

 日本銀行は,出資証券を発行しており(9条1項),そのうち55%は日本政府が保有しています(8条)。

 この出資証券には株式のような議決権はありません。

 日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は,尊重されなければならない(3条1項)とされる一方で,日本銀行は,その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ,それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう,常に政府と連絡を密にし,十分な意思疎通を図らなければならないともされています(4条)。

 日本銀行は,銀行券を発行します(46条1項)。日本銀行券は,法貨として無制限に通用するとされています(46条2項)。

 ちなみに,通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律では,貨幣の製造及び発行の権能は,政府に属するとあります(同法4条1項)。貨幣については,額面価格の二十倍までを限り,法貨として通用するとあります(同法7条)。貨幣の種類は,500円・100円・50円・10円・5円・1円の6種類であり(同法5条1項),その他記念貨幣として1万円・5千円・1千円の三種類を閣議決定を経て発行することができるとされています(同法5条2項)。発行枚数は記念貨幣ごとに政令で定めるとあります(同法5条3項)。

 なお,日本国憲法には通貨発行権についての明示的な規定はありませんが,日銀法及び通貨法において,日本銀行券と貨幣の発行権を日銀あるいは政府に与えているということは,通貨発行権は国家に独占的に帰属していることを前提としているとも思われます。その上で,通貨法では政府が発行する貨幣については極めて制限的なものとし,日銀法において,自主性が尊重される日本銀行に通貨に関する権限を委ねているとも言えます。

 日本銀行に剰余金が生じた場合は,準備金としての積立(日銀法53条1項・2項)や出資者への配当(額面の5%まで:53条4項)を控除した残額(利益)は,国庫に納付されます(53条5項)。日銀の利益は政府に回収されることになります。

 ところで財政法5条本文は公債の発行について,日本銀行にこれを引き受けさせてはならないとしています。もっとも但書では,国会の議決を経た金額の範囲内では許容しています。国債の借り換えの際に発行される借換債は財政法5条但書に基づいているとされてます(日本銀行「日本銀行が国債の引受けを行わないのはなぜですか?」)。

 なお,日銀は現在まで大規模な国債買い入れを行っていますが,これは日本銀行が自らの判断で,市場で流通しているものを対象に実施しているものであり,財政法5条に抵触しないとされています(日本銀行「国債買入オペとは何ですか?」)。