【日弁連】民事訴訟法等の一部を改正する法律の成立についての会長声明

 日弁連が令和4年5月20日に「民事訴訟法等の一部を改正する法律の成立についての会長声明」を公表しています。

 以下,貼り付けます。

 この度、第208回通常国会において、民事訴訟法等の一部を改正する法律が成立した。

 

本改正により、現在の情報技術(IT)の発展に対応して、訴状等のオンライン提出、訴訟記録の電子化、ウェブ会議による口頭弁論期日等を可能にするというIT活用の諸規定が定められた。

 

当連合会は、司法アクセスを拡充し、充実した審理により適正かつ迅速な紛争解決を図るためには、裁判手続等のIT化が重要な課題であり、IT化を推進すべきであると主張してきた。国際的に遅れを指摘されていた裁判手続のIT化において、民事訴訟手続にIT活用の諸規定が整備されたことは大きな前進であると評価する。

 

当連合会は、弁護士について訴状等のオンライン提出が義務化されたことに伴い、会員に対する研修等を実施して、速やかに改正法が定着するよう努め、運用の検証、改善策の提言を通じて、市民にとって利用しやすい民事訴訟手続のIT化発展に寄与する所存である。また、IT技術の利用が困難な本人訴訟の当事者をサポートする体制の整備については、裁判所、日本司法支援センター等の公的機関によるサポート体制の充実度との調整を図りつつ、当連合会の「→民事裁判手続のIT化における本人サポートに関する基本方針」(2019年(令和元年)9月12日)に則り、本改正法の内容を踏まえて取り組んでいく決意である。

 

本改正法の施行のためのシステムの開発・構築に際しては、情報セキュリティの確保、プライバシーや営業秘密の保護、ユーザビリティ(有効性、効率性、満足度)等の実現が図られなければならない。その責任を担う裁判所において、弁護士をはじめとする利用者の意見を反映し、継続的な改善を行うよう希望する。

 

今般の改正に至る過程で、いくつかの課題が明らかになってきた。裁判手続等のIT化を踏まえた障がいのある人に対する手続上の配慮、訴え提起の手数料の在り方等は、新たな法改正を含めた検討が必要である。また、IT化を契機とした支部の統廃合など司法過疎が進む方向での議論は厳に慎むべきであるし、IT化が非弁活動の温床にならないような制度設計も不可欠である。さらに、情報・証拠収集方法の拡充、訴訟記録の保存期間の延長等については、今後も積極的に研究や提言を行う。加えて、法定審理期間訴訟手続は、裁判を受ける権利が損なわれることのないよう今後の運用の検証が重要である。そして、犯罪被害者等の氏名等の情報秘匿制度については、裁判所とともに適切な運用に努めていく。

 

当連合会は、今回の法改正を終着点と捉えるのではなく、IT化を契機として、審理の充実、適正・迅速な紛争解決の観点から、民事裁判手続等における審理の在り方を再検証し、制度の改革を図るとともに、運用等の改善を続け、より身近で利用しやすい民事司法の実現に向け、不断の努力を続けていく。

 

 

 2022年(令和4年)5月20日

日本弁護士連合会
会長 小林 元治