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オンラインカジノの違法性

 オンラインカジノの違法性について、階猛衆議院議員が平成25年10月22日に提出した「賭博罪及び富くじ罪に関する質問主意書」は以下の内容となっております。

 

 刑法第百八十五条は、「賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。」と規定している。また、刑法第百八十六条第一項は、「常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。」と規定している。他方、刑法第百八十六条第二項は、「賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五年以下の懲役に処する。」と規定している。

 刑法第百八十七条第一項は、「富くじを発売した者は、二年以下の懲役又は百五十万円以下の罰金に処する。」と規定し、同条第二項は、「富くじ発売の取次ぎをした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。」と規定し、同条第三項は、「前二項に規定するもののほか、富くじを授受した者は、二十万円以下の罰金又は科料に処する。」と規定している。
 日本人が海外旅行の際に、カジノなどで賭け事をする行為は明らかに賭博行為に該当するが、違法ではない。これは、日本国民の国外犯処罰規定(刑法第三条)の対象となっていないからである。近時、海外にサーバを置いてインターネットのオンラインカジノを利用することにより、又は、海外のカジノをインターネット中継することにより、顧客に賭博をさせるインターネットカジノ店が、賭博罪又は常習賭博罪容疑で検挙されている。多くの場合、インターネットカフェを装い、暴力団の資金源となっている疑いが持たれている。
 他方、インターネット上では、賭博罪は、「必要的共犯」であり、賭博開帳者と共に処罰される(刑法第百八十六条第二項参照)ことが前提であり、賭博開帳者が国外犯として処罰されないのであれば、その対抗犯である賭博罪は成立しないとして、「インターネット賭博カフェと異なり、自宅から海外で開設されたインターネットのオンラインカジノにアクセスして、賭博をするのは違法ではない」と説明をして、個人を相手として賭博をさせている業者もいる。
 同様に、日本人が海外旅行の際に、海外の宝くじを購入する行為は「富くじを授受」する行為に該当するが(刑法第百八十七条第三項参照)、違法ではない。これは、日本国民の国外犯処罰規定(刑法第三条)の対象となっていないからである。インターネット上では、日本国内にいる者に代わって、海外の宝くじの購入を代行する業者がいる。このような業者には、実際には海外の宝くじを購入せずに、国内の顧客から代金のみを受領する詐欺行為を行うものも多いようである。
 これらの事情を踏まえて、以下の点について政府の見解をうかがいたい。

一 日本国内から、インターネットを通じて、海外で開設されたインターネットのオンラインカジノに参加したり、インターネットで中継されている海外のカジノに参加することは、国内のインターネットカジノ店において参加する場合だけでなく、国内の自宅からインターネットを通じて参加する場合であっても、刑法第百八十五条の賭博罪に該当するという理解でよいか。
二 上記一の「日本に所在する者」にサービスを提供した者には、国内犯が適用されるか。すなわち、海外にサーバを置いて賭博サービスを提供する業者にも、賭博開帳罪(同法第百八十六条第二項)が成立し得るという理解でよいか。
三 賭博罪の成立要件とされる必要的共犯に関して、共犯者の片方(賭博に参加する者)が国内、もう片方(賭博開帳者)が国外に所在する場合に共犯関係は成立し得るのか。片方を罰する事が出来ない(非可罰的な)状態にあっても、両者による共犯関係を立証することが出来ればもう片方の者の罪は成立し得るのか。
四 日本国内から、インターネットを通じて、代行業者を通じて海外の宝くじを購入する行為は、刑法第百八十七条第三項の「富くじを授受」する行為に該当するという理解でよいか。
五 国内からインターネットを通じて、オンラインカジノに参加する行為や海外の宝くじを購入する行為が賭博罪や富くじ罪に該当し、禁止されていることを国民に周知するための政府広報をすべきではないか。

 右質問する。提出者  階  猛

 

これに対する政府の答弁は以下の通りです。

 

衆議院議員階猛君提出賭博罪及び富くじ罪に関する質問に対する答弁書

一から三までについて

 犯罪の成否については、捜査機関が収集した証拠に基づいて個々に判断すべき事柄であることから、政府として、お答えすることは差し控えるが、一般論としては、賭博行為の一部が日本国内において行われた場合、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百八十五条の賭博罪が成立することがあるものと考えられ、また、賭博場開張行為の一部が日本国内において行われた場合、同法第百八十六条第二項の賭博開張図利罪が成立することがあるものと考えられる。

四について

 犯罪の成否については、捜査機関が収集した証拠に基づいて個々に判断すべき事柄であることから、政府として、お答えすることは差し控えるが、一般論としては、富くじの授受行為の一部が日本国内において行われた場合、刑法第百八十七条第三項の富くじ授受罪が成立することがあるものと考えられる。

五について

 御指摘のような観点からの広報については、今後の社会情勢等を踏まえ、慎重に検討してまいりたい。

 

 海外業者が日本国内の客にサービスを提供する場合に「賭博場開帳行為」の一部が日本国内において行われたと言えるのか、「必要的共犯」と解するのかの解釈との関わってくると思われます(海外業者を検挙をすることができるのかという実際上の問題は別途あります)。

 

 なお令和2年2月14日提出丸山穂高議員の質問主意書政府答弁もあります。

 

 他方、賭博に関する行為は民事上は公序良俗違反(民法90条)として無効となる場合が多いと思われます。また、クレジット等決済システムの規約においてもチャージバックその他違反事由・解約事由となるものと思われますし、加盟店調査義務・加盟店管理責任を負う「まともな」金融機関(銀行・クレジットカード・信販会社)は、サクラサイト・情報商材と同様にオンラインカジノについても直接加盟店にすることは考えにくいところがあります。このような問題のある業者に決済システムへの参加の途を開くのが決済代行業者となります。もっとも決済代行業者自身も決済システムから排除されることやマネーロンダリングへの関与、違法行為への関与を疑われることは望まないことから、消費者トラブル等発生時にクレジットカード会社を通じたチャージバックや消費者からの解約・返金要求に応じることもサクラサイト・情報商材被害事案では珍しくはありません。

 悪質商法・違法行為を行う業者をクレジット等の決済システムから排除するために、決済代行業者の加盟店管理責任など規制強化を更にすすめる必要に思います。

 

【関連】決済代行について(メモ)