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【改正消費者契約法】情報提供努力義務の拡充(3条1項2号)

改正消契法

(事業者及び消費者の努力)

第3条

1.事業者は、次に掲げる措置を講ずるよう努めなければならない。

 一 <略>

 二 消費者契約の締結について勧誘をするに際しては、消費者の理解を深めるために、物品、権利、役務その他の消費者契約の理解を深めるために、物品、権利、役務その他の消費者契約の目的となるものの性質に応じ、事業者が知ることができた個々目的となるものの性質に応じ、個々の消費者の知識及び経験を の消費者の年齢、心身の状態、知識及び経験を総合的に考慮し考慮した上で、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容に た上で、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容についてついての必要な情報を提供すること。 の必要な情報を提供すること。

 三 <以下略>

 

  

改正前消契法

(事業者及び消費者の努力)

第3条

1.事業者は、次に掲げる措置を講ずるよう努めなければならない。

 消費者契約の条項を定めるに当たっては、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容が、その解釈について疑義

  が生じない明確なもので、かつ、消費者にとって平易なものになるよう配慮すること。

 消費者契約の締結について勧誘をするに際しては、消費者の理解を深めるために、物品、権利、役務その他の消費者契約の目的となるものの性質に応じ、個々の消費者の知識及び経験を考慮した上で、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容についての必要な情報を提供すること。
【コメント】
    消費者契約法3条1項2号は事業者の情報提供努力義務を定めていますが、改正消契法はこの事業者の努力義務を拡しています。このうち3条1項2号は、事業者の消費者の知識・経験を考慮した上での情報提供努力義務を定めていましたが、改正法では消費者の知識・経験に加えて「年齢」「心身の状態」も「総合的に」考慮した上で、情報提供をすることに努めるとされました。若年者・高齢者・障がい者・健康に不安がある方など契約弱者への配慮を求めたものと言えます。もっとも改正法では「事業者が知ることができた」という文言が追加されています。消費者トラブルにおいて事業者は消費者の心身の状態などについて「知らなかった」と弁解することが少なくありません。また取引時に消費者のプライバシーに関わるようなことを確認することなどできないと弁解します。「知ることができた」の要件を狭く解すると情報提供努力義務の適用の有無・程度は弱まる懸念もあります。取引の内容・複雑さ・リスク・高額取引であるか等との相関関係において事業者が「知ることができた」(≒知るべきであった)か否かを判断する必要があると思われます。
    そもそも3条1項は「努力義務」に留まっており、法律実務では残念ながら「努力義務」=法的拘束力はないと、短絡的に考えられがちです。信義則(民法1条2項)上の説明義務・情報提供義務とその義務違反による損害賠償は判例・実務上認められているところ、その信義則の考慮要素や債務不履行における義務違反、不法行為法上の違法等として、改正消契法の事業者の情報提供努力義務を活かす運用が求められます。