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【改正消費者契約法】勧誘をすることを告げずに,退去困難な場所へ同行し勧誘(4条3項3号)

改正消契法

(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)

第4条3項

一 <略>

二 <略>

三 当該消費者に対し、当該消費者契約の締結について勧誘をすることを告げずに、当該消費者が任意に退去することが困難な場所であることを知りながら、当該消費者をその場所に同行し、その場所において当該消費者契約の締結について勧誘をすること。

四 <以下,略>

 

 

  

改正前消契法

(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)
第4条
1 <略>
2 <略>
 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
 当該事業者に対し、当該消費者が、その住居又はその業務を行っている場所から退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず、それらの場所から退去しないこと。
 当該事業者が当該消費者契約の締結について勧誘をしている場所から当該消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず、その場所から当該消費者を退去させないこと。
 当該消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから、次に掲げる事項に対する願望の実現に過大な不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり、裏付けとなる合理的な根拠がある場合その他の正当な理由がある場合でないのに、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものが当該願望を実現するために必要である旨を告げること。
 進学、就職、結婚、生計その他の社会生活上の重要な事項
 容姿、体型その他の身体の特徴又は状況に関する重要な事項
 当該消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから、当該消費者契約の締結について勧誘を行う者に対して恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ、当該勧誘を行う者も当該消費者に対して同様の感情を抱いているものと誤信していることを知りながら、これに乗じ、当該消費者契約を締結しなければ当該勧誘を行う者との関係が破綻することになる旨を告げること。
 当該消費者が、加齢又は心身の故障によりその判断力が著しく低下していることから、生計、健康その他の事項に関しその現在の生活の維持に過大な不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり、裏付けとなる合理的な根拠がある場合その他の正当な理由がある場合でないのに、当該消費者契約を締結しなければその現在の生活の維持が困難となる旨を告げること。
 当該消費者に対し、霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、そのままでは当該消費者に重大な不利益を与える事態が生ずる旨を示してその不安をあおり、当該消費者契約を締結することにより確実にその重大な不利益を回避することができる旨を告げること。
 当該消費者が当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をする前に、当該消費者契約を締結したならば負うこととなる義務の内容の全部又は一部を実施し、その実施前の原状の回復を著しく困難にすること。
 前号に掲げるもののほか、当該消費者が当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をする前に、当該事業者が調査、情報の提供、物品の調達その他の当該消費者契約の締結を目指した事業活動を実施した場合において、当該事業活動が当該消費者からの特別の求めに応じたものであったことその他の取引上の社会通念に照らして正当な理由がある場合でないのに、当該事業活動が当該消費者のために特に実施したものである旨及び当該事業活動の実施により生じた損失の補償を請求する旨を告げること。
4<以下,略>
【コメント】
 改正消契法では,困惑類型の取消権が若干拡充されています。改正消契法4条3項3号は,勧誘することを告げずに,退去困難な場所へ同行し勧誘をした場合の取消権が追加されています。改正前消契法においても退去妨害による取消権が定められており(2号),新たに規律を設ける必要性の疑問や要件が絞られすぎることで,退去妨害による取消権がむしろ制限されるのではないかとの懸念もあり得るところと思われます。もっとも,勧誘目的を秘して,販売店や展示会,イベント,セミナーなどに呼び出すアポイントメント商法なども存するところ,「任意に退去することが困難な場所」との要件や「同行」の要件は広く解することで,取消権として実務上も活用ができる面もあると思われます。「同行」を狭く解すると,古典的なキャッチセールス的な手法にしか適用ができないのではないかと思われます。

 衆議院附帯決議

 消費者契約法第四条第三項第三号については、同項第一号及び第二号の従前の解釈を狭めるものではないことを周知すること。

 ■参議院附帯決議

 消費者契約法第四条第三項第三号については、同項第一号及び第二号の従前の解釈を狭めるものではな いことを周知すること。