日本経済新聞令和4年6月26日WEB記事に「守秘の壁に悩んだ公取委 巨大IT調査、異例の強制宣言」とありました。公正取引委員会が、今後、巨大IT企業と取引先の実態調査に独占禁止法40条に基づく調査権限を積極活用するとのことです。
【独占禁止法】
(調査のための強制権限)
第四十条
公正取引委員会は、その職務を行うために必要があるときは、公務所、特別の法令により設立された法人、事業者若しくは事業者の団体又はこれらの職員に対し、出頭を命じ、又は必要な報告、情報若しくは資料の提出を求めることができる。
(調査のための強制処分違反等の罪)
第九十四条の二
第四十条の規定による処分に違反して出頭せず、報告、情報若しくは資料を提出せず、又は虚偽の報告、情報若しくは資料を提出した者は、三百万円以下の罰金に処する。
公正取引員会は令和4年6月16日に「デジタル化等社会経済の変化に対応した競争政策の積極的な推進に向けて ―アドボカシーとエンフォースメントの連携・強化―」を公表しています。その中では、例えば「実態調査の実施に当たっては、関係事業者等に対して調査票を送付したり、ヒアリングを実施したり、収集した情報を基に経済分析をしたりするな ど、様々な手法を用いている。調査票等に関し、通常、関係事業者等には任意での回答を求めているが、任意の調査では情報収集が困難な場合は、当該 調査の目的を達成するために必要かつ相当な範囲において、独占禁止法第 40条に基づく調査権限を行使する。」「独占禁止法違反被疑事件の審査を開始するかどうかを判断するために実施する情報収集に当たっては、通常、任意の手法によって行う。ただし、任意の手法では情報収集が困難な場合は、当該情報収集の目的を達成するた めに必要かつ相当な範囲において、独占禁止法第40条に基づく調査権限 を行使する。同様に、企業結合審査においても、当該審査の目的を達成する ために必要かつ相当な範囲において、必要に応じて、独占禁止法第40条の規定に基づく調査権限を行使する。」とあります。
そして独禁法40条に基づく調査は「秘密保持契約があるため任意の報告依頼に応じることができない又は事業者等の内部規定により任意の報告依頼では当該事業者等の保有する情報の提供ができないものの、強制権限に基づく報告命令があれば当該事業者等が回答できる場合がある。」ともしています。
巨大ITが、中小企業・小規模事業者企業に、有利な契約条件を一方的に押し付ける実態があるとしても、秘密保持契約や、巨大ITににらまれたくないことから、任意の調査には応じにくいという実情があるところ、独禁法40条に基づく強制調査を積極活用することにより、より実態把握ができるようになるという考え方です。