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酒税と消費税は二重課税?

 酒類には酒税が課されています(酒税法1条)。この酒税は、たばこ税、揮発油税、石油石炭税、石油ガス税などと同様「個別消費税」とされています(国税庁No.6313 たばこ税、酒税などの個別消費税の取扱い)。

 国税庁によると「消費税の課税標準である課税資産の譲渡等の対価の額には、酒税、たばこ税、揮発油税、石油石炭税、石油ガス税などが含まれます。これは、酒税やたばこ税などの個別消費税は、メーカーなどが納税義務者となって負担する税金であり、その販売価額の一部を構成しているので、課税標準に含まれるとされているものです。」とあります。個別消費税もコストとして販売価格の一部を構成しているから、これに消費税を更に課税しても二重課税にならないという論法のようです。もっとも転嫁される消費者からすると二重課税と感じられてしまいます。

 税務大学校のホームページに「消費税と個別消費税の併課に関する一考察―併課をめぐる法的課題と今後の消費課税制度の在り方を中心として―」との論文がありました。その中では「重層的負担は、個別消費税の「転嫁」と消費税における「課税標準の基本構造」を前提として生ずる追加的な負担である。しかし、租税転嫁の本質は、課税が価格に及ぼす経済的作用の結果であり、租税法律関係上も、転嫁する側の納税義務者と転嫁される側の消費者等との間で権利義務関係は存在しない。したがって、個別消費税の納税義務者(製造者等)が売り手の立場として転嫁した個別消費税相当額は、販売価格の一部を構成するものと解することが妥当である。また、消費税の対価概念は、裁判例において、広く消費に向けた支出を課税ベースに含めることを念頭に、私法上の対価概念よりも広く解釈されている。こうした点を踏まえれば、納税義務者が転嫁した個別消費税相当額は、預り金という性格ではなく、あくまで販売価格の一部として資産の譲渡等の対価に含まれると解すべきである。このように、租税転嫁の本質や消費税の対価概念を踏まえれば、個別消費税相当額が転嫁を通じて消費税の対価の一部を構成し、消費という同一の税源に対して重層的に課税されていたとしても、二重課税には該当せず、それを根拠として違法性が問われることはない。しかし、この問題は、複数の税目を併用することにより、税負担が重層的になる点を法的にどう捉えるかという消費課税制度に内在する課題であると考える。」とありました。

 なお、下記の記事も参考となります。

 【東洋経済オンライン】世の中にこんなにある「二重課税」への疑問 ガソリン・酒・たばこ税へさらに消費税を加算 細川幸一:日本女子大学教授