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流動動産譲渡担保と個々の動産の処分

 構成部分の変動する集合動産を目的とする譲渡担保の設定者が目的動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合における処分の相手方による承継取得の可否について最判平成18年7月20日は以下のとおり判示しています。

 「・・・構成部分の変動する集合動産を目的とする譲渡担保においては,集合物の内容が譲渡担保設定者の営業活動を通じて当然に変動することが予定されているのであるから,譲渡担保設定者には,その通常の営業の範囲内で,譲渡担保の目的を構成する動産を処分する権限が付与されており,この権限内でされた処分の相手方は,当該動産について,譲渡担保の拘束を受けることなく確定的に所有権を取得することができると解するのが相当である・・・」

 他方で「通常の営業の範囲を超える売却処分」がなされた場合については「・・・他方,対抗要件を備えた集合動産譲渡担保の設定者がその目的物である動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合,当該処分は上記権限に基づ かないものである以上,譲渡担保契約に定められた保管場所から搬出されるなどして当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められる場合でない限り,当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできないというべきである・・・」

 本判決の事案は、処分された動産が「集合物から離脱した」とは認められない事案であったため、処分が「通常の営業の範囲」内かを確定するために破棄差し戻しをしています。

 「集合物から離脱した」場合に、そのことだけで当然に承継取得が認められるのかについては議論があるようです。