仙台高裁令和5年3月10日判決は、【2 本件事故を回避することができる相当程度高い可能性があったこと】との項(20頁)において以下のとおり判示している。
原告らは、経済産業大臣が、長期評価によって想定される津波に対し、原子炉施設について適切な防護措置を講ずるよう命ずる技術基準適合命令を平成14年末に被告東電に発していれば、長期評価により想定される最大でO.P.+15m程度の津波高さとなる想定津波を前提とし、かつ、「安全上の余裕」を確保した上で、「重要機器室の水密化」及び「タービン建屋等の水密化」を講じ、本件津波に対しても 非常用電源設備等の被水を回避することができたと主張する。
この点、以下に検討するとおり、経済産業大臣が技術基準適合命令を平成14年末に発していれば、長期評価により想定される最大でO.P.+15m程度の津波高さとなる想定津波を前提とし、かつ、「安全上の余裕」を確保した上で、防潮壁の設置、あるいは「重要機器室の水密化」及び「タービン建屋等の水密化」などの防護措置を講じ、本件津波に対しても、非常用電源設備等が浸水して原子炉が冷却できなくなって炉心溶融に至るほどの重大事故が発生することを避けられた可能性は、相当程度高いものであったと認められる。
仙台高裁判決は「安全上の余裕」を確保した上で、「防潮壁の設置」のみならず「水密化」などの防護措置により「重大事故が発生することを避けられた可能性は相当程度高い」と結論づけているのである。