仙台高判令和5年3月10日(いわき市民訴訟控訴審判決)の怪(その6)

 仙台高裁令和5年3月10日判決は、【2 本件事故を回避することができる相当程度高い可能性があったこと】を認めた理由を以下のとおり掲げている(20頁以下)。

 

 すなわち、保安院と原子力安全基盤機構が被告東電の参加も得て平成18年以降行っていた溢水勉強会においては、津波による浸水により原子力発電所の電源設備が機能を失う危険に対する対策として、被告東電は、溢水対策を考慮したプラント設計として、柏崎刈羽原発について、タービン建屋内の復水器室の扉を水密化していること、原子炉建屋最地下階ECCS(非常用炉心冷却装置)系機器室全てが水密扉となっていることを報告していた(甲A39の2の5頁)。

 

 また、被告東電は、平成20年4月に東電設計による津波の試算が、最大O.P. +15.7mとなり、敷地高O.P.+10mを越えることについて報告を受けて 同年7月まで対策を検討し、その検討の中では、O.P.+10mの敷地地盤上に高さ10mの防潮壁を設置することや、沖合防潮堤の設置や既設防波堤の拡張等の対策を検討したばかりでなく、日本原電が東海原発に建屋の止水扉による対策を検討しているという情報も得ていた。現に東海第二原発では、長期評価に基づく津波の想定に基づき、平成20年から平成21年にかけて、建屋の水密化措置として、 防水扉、防水シャッター等が施工され、中部電力の浜岡原発でも、平成20年までに津波対策として、原子炉建屋等の出入口への防水構造の防護扉等の設置がされた (甲A699)。