仙台高判令和5年3月10日(いわき市民訴訟控訴審判決)の怪(その7)

 仙台高裁令和5年3月10日判決は、先に見たように、東電が溢水勉強会において柏崎刈羽原発についてタービン建屋内の復水器室の扉を水密化していること、原子炉建屋最地下階ECCS(非常用炉心冷却装置)系機器室全てが水密扉となっていることを報告し、また、平成20年4月に東電設計による津波の試算が、最大O.P. +15.7mとなり、敷地高O.P.+10mを越えることについて報告を受けて同年7月まで対策を検討していたこと、日本原電が東海原発に建屋の止水扉による対策を検討しているという情報も得ていたことなどを事実認定した上で次のように判示している(21頁以下)。

 

 ところが被告東電は、東電設計による津波の試算を元に長期評価により想定される津波への対策を検討したにもかかわらず、平成20年7月、長期評価により想定 される津波への対策を先送りすることを決定し、本件事故の4日前に保安院に報告するまで、国の規制当局にも、この津波の試算を報告しなかったのである。 以上の事実経過からすれば、平成14年7月の長期評価の公表後、同年末以降適時に、経済産業大臣が被告東電に対し、長期評価によって想定される津波への対策として防護施設の設置を命ずる技術基準適合命令を発していれば、平成23年3月11日までの間には、少なくとも東電設計が試算した最大O.P.+15.7mの津波に対する対策として、敷地への防潮壁の設置、あるいは「重要機器室の水密化」 及び「タービン建屋等の水密化」の措置を講ずることには、十分な時間的余裕と技術的な可能性があったと認められる。