東電津波試算の怪その6

 東京電力平成20年試算の「2号機」における「取水ポンプ位置O.P+4メートル」の最大水位(満潮時)は「9.244m」である(10枚目・表2-3(2))。これは領域9の「日本海溝寄りプレート間(津波地震モデル)」「R9-06-02H」におけるものである。

 この「R9-06-02」は概略パラメータスタディにおいて「波源」が「やや北」で、「走向」が「+5度」において最高水位が算出されたことから(9枚目・表2-1「R9-06」)、これについて詳細パラメータスタディを行い、「R9-06-02」においてさらに最大水位を算出したというものである。なお、R9-06-02Hとの差は2m78cmであり、増加率は1.43である。

 概略パラメータスタディ(表2-1)をみると、波源「やや北」の走向0度(R9-05)で6.205m、走向5度(R9-06)で6.464mが算出されている。5度の走向の差異で約26センチ程度・1.04倍の差異ではある。それでも仮に土木学会2002に従い走向を+10度とした場合はさらに水位は上昇した可能性もある。 

 さらに波源「北」に着目すると、走向0度(R9-02)では4.692mであるが、走向5度(R9-03)では6.049mであり、約1メートル35センチ・約1.29倍も上昇している。上昇幅が大きい(他の1号機・3号機でも同様である)。仮に走向を+10度とした場合、あくまで単純計算であるが7メートルを超え、詳細パラメータスタディに用いられた「R9-06」を超える可能性もある(1.29倍をすると7m80cm)。そして、さらに詳細パラメータスタディが行われれば「R9-06-02H」の9.244mを超え、さらに10mを超える結果となった可能性も見えてくる(仮に7mとし1.43倍をすると10m10cm、7.8mを1.43倍すると11.154m)。実際は単純ではないかもしれないが、東側からの津波の遡上が試算されないのかの検証がなされていないのである。さらにあくまでこれは取水ポンプ地点での水位であるから、10メートル盤前面まで遡上した段階においての水位はさらに上昇する可能性もある。

 敷地高さ15.7mが算出された以上はさらに水位が上昇する可能性のあるパラメータスタディを多数実施して対策を検討することが必要であるし、その中であまりにも高い水位が算出された際に、そのパラメータが科学的根拠を持って合理的に排除できるのであれば排除すればよい。

 東電平成20年試算は10メートル盤を超える津波の予見可能性を基礎づけるものとして合理的なものであるが、対策を検討する際にはこれのみに依拠すればよいほど検証が積み重ねられたものではないのである。