東電津波試算の怪14 福島第二原子力発電所と同じ波源モデルでよいのか

 東電平成20年試算では当然であるが福島第二原子力発電所についても津波評価がなされている。


 福島第二においても福島第一と同じプレート間(津波地震モデル)【R9-06-02H】で南側で15メートルを超える津波を試算している。

 しかし、福島第一と第二は約10キロメートル離れた位置にある。この異なる位置にある二つの異なる施設について同じ波源モデル【R9-06-02H】で試算をするというのは粗いのではないか。波源位置を【やや北】から例えば【5キロ】ずつ南北に移動した場合には(さらには走向を10度とした場合は)福島第一と第二では最大試算となる地点は異なるのではないか。 

 なお土木学会2002を受けた東電平成14年試算では領域7についてであるが、福島第一と第二では最高水位を試算した位置が異なるとしてそれぞれ詳細パラメータスタディを行っている。



 雑な計算であるが約200キロの長さの波源をJTT2-3の約500キロにおいて5か所移動させる場合は約66キロずつ移動させているものと思われる(異なっていたらすみません)。しかし【やや北】で最大値を把握した後は、各施設に着目し他の試算のように例えば【5キロ】あるいは【10キロ】ずつきめ細やかに移動させるなどして、さらに最大となる波源位置を求めなければ土木学会2002の要求する試算には達していないと思われる。

 この試算程度で対策工事をする場合には、試算が粗いことから、さらに最大水位を試算する波源位置や走向があることを踏まえた対策、東側からも10メートルを超える津波が来る可能性があることを踏まえた対策が要求されるはずである。東側からは10メートル越えの津波は来ない、南側だけ対策すればよい、という試算までは東電平成20年試算では尽くされていないからである。

 規制権限が行使され東電平成20年試算が公にされた下では、保安院やJNES、地元自治体や研究者など様々な立場から東電平成20年試算が厳しく検証されることになる。その際に、この東電平成20年試算程度のパラメータスタディでは、東側からは10メートル越えの津波は来ないことまでは確認されないから、東側からの津波にも当然備えることになる。東側からの津波対策が不要と言えるためには、東電平成20年試算について少なくとも土木学会2002が要求するレベルの更なるきめ細やかなパラメータスタディが行われた上で、東側からの浸水はないことが確認されなければならない。その試算を行わないまま対策工を検討するのであれば、東側からの浸水の可能性は排除されていないのであるから東側からの浸水に対しても対策は行われることになる。