福島第一原子力発電所の定期検査と規制権限行使

 福島第一原子力発電所の定期検査の状況は下記のとおりである。

 【東電HP 福島第一原子力発電所の定期検査実績一覧

 

1号機ないし3号機は平成22年年末頃までは定期検査で停止していたし4号機は平成23年3月11日も定期検査で停止中であった。

 

事故前の電気事業法は定期検査について以下のとおり定めている。

(定期検査)

第54条
1.特定重要電気工作物(発電用のボイラー、タービンその他の電気工作物のうち、公共の安全の確保上特に重要なものとして経済産業省令で定めるものであつて、経済産業省令で定める圧力以上の圧力を加えられる部分があるもの並びに発電用原子炉及びその附属設備であつて経済産業省令で定めるものをいう。次項において同じ。)については、これらを設置する者は、経済産業省令で定めるところにより、経済産業省令で定める時期ごとに、経済産業大臣が行う検査を受けなければならない。ただし、経済産業省令で定める場合は、この限りでない。
2.経済産業大臣は、前項の検査のうち、原子力を原動力とする発電用の特定重要電気工作物であつて経済産業省令で定めるものについての検査に関する事務の一部を、経済産業省令で定めるところにより、機構に行わせるものとする。
3.機構は、前項の規定により検査に関する事務の一部を行つたときは、遅滞なく、その結果を経済産業省令で定めるところにより、経済産業大臣に通知しなければならない。
(定期安全管理検査)
第55条
1.特定電気工作物(発電用のボイラー、タービンその他の経済産業省令で定める電気工作物であつて前条第一項で定める圧力以上の圧力を加えられる部分があるもの並びに発電用原子炉及びその附属設備であつて経済産業省令で定めるものをいう。以下同じ。)を設置する者は、経済産業省令で定めるところにより、定期に、当該特定電気工作物について事業者検査を行い、その結果を記録し、これを保存しなければならない。
2.前項の検査(以下「定期事業者検査」という。)においては、その特定電気工作物が第三十九条第一項の経済産業省令で定める技術基準に適合していることを確認しなければならない。
3.定期事業者検査を行う特定電気工作物を設置する者は、当該定期事業者検査の際、原子力を原動力とする発電用の特定電気工作物であつて経済産業省令で定めるものに関し、一定の期間が経過した後に第三十九条第一項の経済産業省令で定める技術基準に適合しなくなるおそれがある部分があると認めるときは、当該部分が同項の経済産業省令で定める技術基準に適合しなくなると見込まれる時期その他の経済産業省令で定める事項について、経済産業省令で定めるところにより、評価を行い、その結果を記録し、これを保存するとともに、経済産業省令で定める事項については、これを経済産業大臣に報告しなければならない。
4.定期事業者検査を行う特定電気工作物を設置する者は、定期事業者検査の実施に係る体制について、経済産業省令で定める時期(第六項において準用する第五十条の二第七項の通知を受けている場合にあつては、当該通知に係る定期事業者検査の過去の評定の結果に応じ、経済産業省令で定める時期)に、原子力を原動力とする発電用の特定電気工作物であつて経済産業省令で定めるものを設置する者にあつては機構が、原子力を原動力とする発電用の特定電気工作物以外の特定電気工作物であつて経済産業省令で定めるものを設置する者にあつては経済産業大臣の登録を受けた者が、その他の者にあつては経済産業大臣が行う審査を受けなければならない。
5.前項の審査は、特定電気工作物の安全管理を旨として、定期事業者検査の実施に係る組織、検査の方法、工程管理その他経済産業省令で定める事項について行う。
6.第五十条の二第五項から第七項までの規定は、第四項の審査に準用する。この場合において、同条第五項中「第三項の経済産業大臣の登録を受けた者」とあるのは「機構又は第四項の経済産業大臣の登録を受けた者」と、同条第六項中「当該事業用電気工作物」とあるのは「当該特定電気工作物」と読み替えるものとする。
また電気事業法施行規則93条の3は
経済産業大臣は、定期検査を終了したと認めたときは、定期検査終了証を交付する。

と定めていた。

 

 定期検査の流れについては電気事業連合会の定期検査Q&Aに概要が説明されているが国(保安院)やJNESのチェックも受けることになる。地元自治体への説明も必要である。

 

 仮に15.7m試算を契機に技術基準適合命令が発せられた状態で定期検査に入り順次停止となった原発について、技術基準に不適合なままで定期検査終了証が交付されて再稼働が許されたであろうか。仮に一時停止命令まで発令されなかったとしても、定期検査により順次停止していった後の再稼働は何らかの対策がなされない限りは許されなかったと考える方が自然である。そして停止中の福島第一原子力発電所に3.11津波が襲来しても既に崩壊熱が大幅に低下していたから少なくとも過酷事故は回避できたはずである。