東電津波試算の怪17 朔望平均満潮位と【R9-06-01】モデル

  東電平成20年試算では平均潮位O.P.+0.889mを解析潮位としている。概略パラメータスタディ・詳細パラメータスタディはこの平均潮位において行われている。概略パラでは【位置】【やや北】【走向】【+5度】の【R9-06】が上昇側最大ケースとして採用され、詳細パラに移行し、そこで【上縁深さ】【2㎞】【傾斜角】【25°】【すべり角】【±0°】の【R9-06-02】モデルが上昇側最大ケースとして採用されている。

 もっとも詳細パラの表2-3(1)を子細にみると【取水ポンプの位置OP+4mの津波高さ(OPm)】では【すべり角】【+10°】とする【R9-06-01】モデルの方が【2号機】【3号機】【4号機】【6号機】で【すべり角】【±0°】とする【R9-06-02】よりも水位は上回っている。2号機においては31cm上回っている。他方で【R9-06-02】が採用される理由となった【敷地OP10m】における【R9-06-01】と【R9-06-02】の差はわずか8mmにすぎない。

 1号機から4号機への影響を試算するのであれば【R9-06-01】モデルを切り捨てるべきではない。

 ところで平均潮位を解析潮位とする詳細パラにおいて最大ケースを求めた後に、朔望平均満潮潮位OP+1.490mにおける上昇側最大ケースを試算することとなり、【R9-06-02】では敷地南側で15.707mの試算などが求められている。他方で取水ポンプ位置OP+4mの津波高さは2号機で9.244mである。

 この朔望平均満潮潮位における試算は単純に【平均潮位】と【朔望平均満潮潮位】の差を足し合わせるのではなく【R9-06-02】モデルにおいて【朔望平均満潮潮位】を用いて再度計算を実施するとある(4頁)。

 

 【R9-06-02】モデルでは平均潮位における2号機における最大水位は7.604mであり、朔望平均満潮潮位においては9.244mである。1.64mも大きくなっている。

 【R9-06-01】モデルでは平均潮位のそれは7.635mであり3.1cm大きいが、【R9-06-01】モデルにおいて朔望平均満潮潮位について再計算を実施した場合の水位はいかほどになるのであろうか(単純に9.275mとはならないはずである)。

 わずかな差かもしれないが,このように東電平成20年試算は必ずしも試算が多数回実施され最も厳しい試算が導き出された十分なものではないと言える。