浜岡原子力発電所の前面砂丘と腰部防水扉

 「(1) 最高水位

 数値シミュレーションによる津波高の検討の結果から,敷地における最大水 位上昇量は,仮想的にプレート間地震と石花海海盆西縁の断層帯および A-21 断 層を連動させた場合(以下「水位上昇側津波」という。)で 7.50m であり,評価 用の最高水位は,朔望平均満潮位(T.P.+0.79m)を考慮すると T.P.+8.3m程度で ある。なお,敷地に最も影響を及ぼしたと考えられる 1854年安政東海地震によ る津波高さは,満潮位を考慮すると T.P.+6m 程度である。」(Ⅲ-1)

「3. 津波に対する安全性の評価

 評価用の津波水位に対する原子炉施設の安全性について,数値シミュレーシ ョンの結果を考慮して,以下のとおり検討した。

 (1) 津波による水位上昇に対する安全性 津波による水位上昇に対しては,敷地は T.P.+6.0~8.0mに整地され,敷地前 面には高さ T.P.+10~15m,幅約 60~80m の砂丘が存在する。敷地前面砂丘につ いては,地震時において砂丘の一部にすべりが生じて標高が低下する可能性が あるが,残留標高が津波水位を上回ることから,津波による水位上昇に対して, 原子炉施設の安全性に問題とならない。

 

 なお,敷地前面砂丘については,津波,高潮等に対する敷地防護の観点より, 敷地前面砂丘の維持管理のための対策を以下のとおり実施しており,今後も引き続き実施していく。また,これらの対策を適切に実施することにより,砂丘の現状地形(砂丘の高さや幅)が損なわれていないことを測量記録により確認している。

 

①堆砂垣の設置 <略>

②防浪工設置<略>

③植栽<略>

 

(Ⅲ-5以下)

 さらに,3号機原子炉建屋,4号機原子炉建屋および海水熱交換器建屋の出入口には腰部防水構造の防護扉等が設置されていること,3,4号機RCWS ポンプ電動機の据付高さは,敷地高さより 50cm 高い T.P.+6.5m であることから,津波による水位上昇に対して,原子炉施設の安全性に問題とならない。また,数値シミュレーションによる津波高の検討結果から,敷地東側および 西側を流れる河川の津波による遡上は,敷地前面の最高水位を下回ることから, 敷地が浸水することはなく,原子炉施設の安全性に問題とならない。(Ⅲ-6)

 中部電力作成の「浜岡原子力発電所の津波対策の状況について」(平成23年10月)におると平成9年4月の5号機の設置変更許可までには「腰部防水扉」が設置されていたようである。

 昭和56年10月頃に提出された「(3) 「中部電力(株)浜岡原子力発電所の原子炉の設置変更(3号原子炉の増設)に係る公開ヒアリング」における意見等の参酌状況について」には以下の記述がある。

 

 

(3) 水理
 地震による津波,あるいは大型台風による高波で現状の砂防波堤は決潰の心配はないか。
 また,原子炉施設は大丈夫か。

 

 1 津波については,過去の地震に関する古文書及び文献等に基づいて検討した結果,敷地前面において想定される津波の高さは,T.P.(東京湾中等潮位)+6mを超えるものではないと推定される。本原子炉施設の主要構造物はT.P.+6mに整地造成して設置されるが,敷地前面にはT.P.+10〜15mの砂丘がある。大地震により砂丘の一部にすべり等を起こしたとしても,この砂丘は大きく崩壊することはなく津波の高さを高めに仮定しても津波が砂丘を超えることはないものと判断した。
 また,原子炉建屋等の出入口は腰部防水構造の防護扉等が設置されることとなっている。
 なお,適切な護岸工事及び維持管理により砂丘の保全が行われることとなっていることを確認した。

 

 2 また,敷地前面海域における昭和45年6月から昭和47年7月までの観測によると最大波高は6.93m(昭和47年3月の低気圧による)となっている。
 敷地前面海域は,海底勾配が緩く,波浪は汀線に至るまでに砕波して波高が小さくなる。

 

 3 以上のことから,本原子炉施設は安全上支障ないものと判断した。

 

 前面砂丘の維持管理とともに、大地震による砂丘のすべり等による崩壊への懸念から、昭和56年頃には腰部防水構造の扉等が設置される方向となっていたことがわかる。