久木田豊・渡邉憲夫「福島第一原子力発電所1号機において地震に起因する冷却材漏えいが事故の原因となった可能性があるという指摘についての検討について」(日本原子力研究開発機構 2014.11)は、直接的には非常用復水器(イソコン・IC)が津波発生前の段階で既に損傷していたという仮説を否定する論文ではあるが、その検討過程では、非常用復水器の設定変更やその設定変更に際しての国や東電の関与に疑問を呈する内容となっている。
2010年の非常用復水器の設定変更の際に、ICの理解や大規模地震発生時の操作等について十分な備えがなされていれば事故は防ぐことができた蓋然性が高いのではないか、あるいはICへの優先起動への設定変更はなされずにSRVとHPCIによる対応がなされていたのであれば、2号機・3号機と同様に津波後も冷却機能は一定期間維持され、事故を防ぐことができた蓋然性が高いのではないかとの考えに示唆を与える内容となっている。。
以下、これに関連する記載部分を抜粋する。
(引用はじめ)
異常時の格納容器隔離(格納容器隔離弁の自動閉止)に関する設計は安全上重要であるが、我が国の設置許可申請書等においては、隔離のシステム設計が記載されておらず、改善の余地があると考える。例えば、外部電源喪失に伴って隔離信号が発信されることについては、設置許可申請書だけでなく、前述のように事故時運転操作手順書にも記載されていない。また、1号機においては、制御用直流電源 1 系統の喪失によって IC が 2 系列と も自動的に隔離される設計となっており、今回の事故では実際にこのようなことが起こったと考えられているが、直流電源喪失事象に関する事故時運転操作手順書では、当該直流電源によって駆動される弁が操作不能となることが記されているだけで、IC の隔離弁が自動的に閉止動作に入ることは記載されていない。 このように、1号機に関するこれらの文献からは、隔離を適切・確実なものとするためにどのような設計方針がとられているか、また、その結果、具体的にどのような隔離挙動が生じるか、を把握することが難しい。すなわち、1号機における格納容器隔離設計に関する各種文書の記載は、体系的でなく、かつ十分に詳細でなかったと考えられる。
(9頁:引用おわり)
【コメント】ICの直流電源喪失時の「フェールセーフ」機能について手順書等に記載がなかった。3.11の際には津波後もイソコンの稼働状況が把握できず、1号機では冷却がなされないまま時間が経過してしまっている。
(引用はじめ)
1号機においては、常用電源の喪失によって原子炉建屋の換気空調系(heating, ventilating and air conditioning: HVAC)が停止し、原子炉水位低もしくは RPS電源喪失により非常用ガス処理系(standby gas treatment system: SGTS)が自動起動した。
(脚注20 主蒸気止め弁の閉止によって原子炉水位の一時的な低下(いわゆるボイドのつぶれ)が起 こり、RPS 電源の喪失よりも早く隔離信号が発信された可能性がある。)
(引用おわり)
【コメント】直接本題とは関係はないが、スクラム停止直後の「ボイドのつぶれ」による水位低下を契機とする機器の起動設定の例となる。HPCIについてもこのような設定も可能と思われるが、水位低状態の一定時間の経過を条件とすれば瞬間的な「ボイドのつぶれ」によるHPCIの起動はしない設定にすることも可能となると思われる。
(引用はじめ)
1号機では、地震によるスクラムの後、外部電源喪失に伴う MSIV閉止や PCIS作動によ り、原子炉隔離(主蒸気流量、給水流量ともにゼロ)の状態となった。隔離後、原子炉炉心の崩壊熱により原子炉圧力が上昇し、14 時 52分、原子炉圧力高(7.13 MPa[gage])によ り IC が 2 系列とも自動起動した。これは、直近の定期点検期間中(2010年7月)に原子炉スクラム高設定値の変更に併せて ICの作動設定圧を逃がし安全弁(safety relief valve:SRV)の作動設定圧よりも低くなるよう変更していたことによる。原子炉圧力高スクラム設定値の変更は、2009年2月25 日に発生したタービンバイパス弁の不具合により原子炉圧力が上昇して SRVが動作した事象において、原子炉圧力高スクラムが生じなかっ たことを受けたものである。一般にBWRでは、原子炉圧力高スクラム設定値はSRV作動設定値よりも低く、原子炉圧力が上昇する事象では原子炉がスクラムした後にSRVが作動するよう設定されているが、1号機では2010年7月の設定値変更前まで、圧力高スクラム設定値が7.27MPa であったのに対しSRVの作動設定圧は 7.27~7.41MPa、IC の作動設定圧も7.27MPaであり、これらの動作が同じ圧力で開始されるようになっていた 。こうした設定値の考え方には1号機にICという特有の設備が設けられていたことが関連しているものと考えられるが、2009 年の事象後にどのような検討を経て設定値の変更を行ったのか、特に、ICの設定値を変更することによる原子炉の圧力・水位挙動への影響をどのように検討したかについて、ICを有する敦賀-1号機の設定状況も含めて精査する必要がある。また、IC動作設定値の変更について、手順書では数値自体の改訂が行われたのみであり、 SRVの動作との関係等について特段の検討が行われた形跡は認められず、操作手順への反映がなされていない。さらに、この設定値の変更が規制上どのように扱われたかも明らかでない。従って、今後の調査分析を通して設定値の変更に関する規制上の取扱について検討を行う必要があると考えられる。
(脚注21 原子炉圧力高スクラム設定値は 7.27 MPa から 7.07 MPa に変更された。
脚注22 IC動作設定値は 7.27 MPa から 7.13 MPa に変更され、SRVによる原子炉圧力の手動制御範囲も 6.37~7.26 MPa から 6.27 MPa~7.06 MPa に変更された。
脚注23 例えば、2,3号機の原子炉圧力高スクラム設定値は 7.27 MPa、SRV作動設定圧は 7.44~7.58 MPa となっている。
脚注24 計器誤差を見込み、実際の設定圧(動作セット値)は、SRV が 7.17 MPa、スクラム信号が 7.24 MPa となっていた。
(9頁以下引用おわり)
【コメント】
平成22年定期点検停止中に行われたスクラム圧力高設定値変更工事とともになされたICの設定値変更について述べられている。東電において、どのような検討を経て設定値の変更が行われたのか明らかにされていない。これまで作動実績も運転経験もないイソコンをなぜ最前線に投入することになったのか未解明なままである。また、ICの優先起動後に原子炉の圧力や水位がどのようになるのかの検討も勿論必要である。敦賀1号機では、過去の作動事例2例を見る限り、おそらくSRVが優先起動する設定のままであったと思われる。
そして、スクラム圧力高設定値変更工事については、工事計画の認可、使用前検査がなされているが、非常用復水器の設定値変更工事については、これらがなされた形跡はない。電気事業法施行規則別表第二に該当しないのであろうか(工事計画の事前届出や使用前検査は必要なのではないか)。ICの設定値変更の保安規定の変更は認可がなされているから、保安院は設定値変更は認識していたはずであるが、いかなる審査・検討がなされたのか全く明らかではない。規制当局がICの設定変更に安全審査を慎重に行い、東電の知識や運転経験、保安教育、フェールセーフ機能への理解や異常時の運転制限の扱いについても確認すべきであったのにこれを懈怠したのではないか。
(引用はじめ)
IC の自動起動から約10分後(15時03分)、運転員は、ICの戻り配管隔離弁(図 5.1(2) の MO-3A、MO-3B)を一旦全閉とし IC を停止させたが、この操作に関して、東電事故調では、操作手順書で定める原子炉冷却材温度降下率の制限値 55℃/h 以下を遵守できないと 判断したためであるとしている。これに対し、国会事故調は、原子炉圧力が急速に低下するのを見た運転員が、IC その他における冷却材喪失の発生を懸念したためではないかと している。しかし、圧力の低下速度は JNES による RELAP5 コードを用いた解析により 良く再現されており、正常な挙動である。このため、もし運転員が上記のような懸念を持ったとすれば、IC が自動起動した際に原子炉が急減圧することを十分に認識していなかったことが疑われる。実際、1号機においては、少なくとも20年間にわたって IC が作動したことがなく、2010年7月の変更によって原子炉隔離時に IC が作動する可能性が増加したにも関わらず、実作動試験はもちろん、シミュレータ等による IC 運転訓練が行われた形跡がない。
15 時10分、運転員は、格納容器冷却系(containment cooling system: CCS)を手動起動しト ーラス水冷却モードでS/Cの空間部と圧力抑制プール水の冷却を行っている。東電は、この操作について、手順書に従い SRVの使用による圧力抑制プール水の温度上昇に備えて行われたものとしている。しかし、ICを積極的に使用すれば、圧力抑制プール水の温度上昇までには相当の時間余裕があり、上記の操作の優先度は高くない。従って、運転員にICの操作経験がなく、冷温停止への移行においてICとSRVをどのように使用するのか手順書には具体的な記載がないことなどが、上記の操作に影響していたことが疑われる。
15時17分以後、運転員は、IC1系列(IC-A)のみを手動で 3 回起動・停止しているが、 東電事故調では、「この操作は手順書に従って原子炉圧力を 6~7 MPa の範囲に維持しよう としたものである」としている。この結果、記録が残っているスクラム後約 30分間において、原子炉圧力は SRV の作動設定圧以下に維持され、SRVが作動することはなかった。
ただし、今回のように大地震により原子炉がスクラムしさらに外部電源も喪失した状況において、原子炉圧力を高圧に維持することが適切であるかは疑問である。
(脚注25 運転員が実際に監視していたのは原子炉圧力の挙動であったと考えられる。東電事故調においては、「BWR では原子炉圧力容器内は飽和状態にあるので原子炉圧力の変化から冷却材温度の変化を確認できる」としている(最終報告書 p.122)。しかしながら、IC の動作に伴い、原子炉圧力容器下部の冷却材温度は飽和温度より急峻に低下している(政府事故調最終 報告(資料編)p.5)ので、この考え方の妥当性には疑問がある。55℃/h という制限値は原子炉圧力容器の熱疲労の管理を目的とするものであるため、保安規定等において、個別のプラント設計及び対象とする事象の内容に応じて、この制限値を適用する条件と、監視・記録 すべき温度測定点を定めるべきである。なお、BWR では冷却材温度計は設置されておらず、原子炉圧力容器の外表面温度が監視対象である。
脚注26 IC 2 系列が同時に起動する設定値となっていた(即ち、設定値が同じであった)。
脚注27 2、3 号機においては、原子炉隔離後に原子炉圧力が上昇し SRV が作動している。)
(10頁以下 引用おわり)
【コメント】
運転員の知識に疑問を示している。ICが自動起動した際に原子炉が急減圧することを十分に認識していなかったことが疑われるとされている。20年間ICが作動したことがないこと、平成22年7月のICの優先起動への変更の際にも実作動試験も運転訓練の形跡もないことが指摘されている。SRVの使用を前提とする操作がなされていることを指摘し、ICとSRVの操作が整理されていなかったことも指摘している。
またICの開閉操作により、原子炉圧力を「6~7MPa」の範囲に維持しようとしていることについても、大地震発生+外部電源喪失(さらに津波警報発令)時に高圧に維持することが適切であるかは疑問であるとされている。
(引用はじめ)
原子炉スクラムに適用した手順書の妥当性に関する検討:1-3 号機においてスクラム直後に適用した手順は、いずれも事象ベースの事故時運転操作手順書の1つである「原子炉スクラム(B)主蒸気隔離弁閉の場合」であり、手順通りに対応した旨の見解を示 している。福島第一原子力発電所では、事象ベースの手順書として「大規模地震が発生した場合(自動スクラムした場合)」及び「大規模地震が発生した場合(外部電源喪失の場合)」なる手順書が用意されている。また、徴候ベースの事故時運転操作手順書が策定されており、その導入条件の1つとして「原子炉スクラム」が設定されている。このように、今回の地震スクラム事象の発生時において、適用可能と考えられる手順書が複数用意されていたにも拘らず 1-3 号機においてこれらの手順書の適用が 検討された形跡はない。一方、福島第二原子力発電所では外部電源が1回線残ってお り、初期の状況は福島第一原子力発電所に比べると厳しいものではなかったはずであ るが、地震直後から徴候ベース手順書を適用している。従って、1-3 号機で徴候ベース手順書や「大規模地震が発生した場合(自動スクラムした場合)」の手順書を適用しなかった理由について分析を行い、事象ベース手順書と徴候ベース手順書の適用基準に ついて改めて検討する必要があると考える。また、地震による影響を受けた女川、東海第二で適用した手順書についても調査を行い、適用にあたっての考え方を比較検討する必要がある。
(脚注58 東電事故調最終報告書において、2,3 号機では、地震発生直後から全交流電源喪失までの 間に対して「外部電源喪失による原子炉隔離時(主蒸気隔離弁閉時)対応手順書に従い」と 明記している(2 号機:p.87、3 号機:p.89)が、1 号機については、単に「手順書に従って」 としか記載されていない。しかしながら、「事故時運転操作手順書の適用状況について」(文 献(52-54))においては、1-3 号機全てに対し事象の進展に照らして事故時運転操作手順書を 選定し(具体的には「原子炉スクラム事故(B)主蒸気隔離弁閉」)、手順書と実際の操作の適 用状況の確認を行ったとしている。)
(29頁以下、引用おわり)
(29頁以下、引用はじめ)
IC の作動設定値変更に関する検討:2009 年の事象(タービンバイパス弁の故障に伴う SRV の作動)を受けて 2010 年 7 月の定期点検時において原子炉圧力高スクラム設定値 が変更され(7.27 MPa → 7.07 MPa)、併せて IC の作動設定値が 7.27 MPa から 7.13 MPa に、また、SRV の手動制御範囲も 6.37~7.26 MPa から 6.27 MPa~7.06 MPa に変更され たが、これらの変更にあたってどのような検討がなされたかが明確にされていない。 また、これら変更の際に当時の規制機関であった原子力安全・保安院がどのような対 応を取ったのかについても不明である。これらの変更は、手順書において数値自体の 改訂はなされたものの、操作手順に反映されていない。特に、IC の作動設定値の変更は原子炉スクラムから全電源喪失までに間のプラント挙動に大きな影響を及ぼすとと もに、設置許可申請書の安全解析における前提条件が変わることも意味するため、よ り慎重な検討がなされ変更の事実とその影響が関係者に周知されるべきであったと考 える。IC を有する敦賀-1 号機や国外プラントとの比較検討も含め、規制上の観点から これらに関する今後の調査分析を行う必要がある。
(引用おわり)
(引用はじめ)
IC の作動設定値変更に関する検討:2009 年の事象(タービンバイパス弁の故障に伴う SRV の作動)を受けて 2010 年 7 月の定期点検時において原子炉圧力高スクラム設定値 が変更され(7.27 MPa → 7.07 MPa)、併せて IC の作動設定値が 7.27 MPa から 7.13 MPa に、また、SRV の手動制御範囲も 6.37~7.26 MPa から 6.27 MPa~7.06 MPa に変更され たが、これらの変更にあたってどのような検討がなされたかが明確にされていない。 また、これら変更の際に当時の規制機関であった原子力安全・保安院がどのような対 応を取ったのかについても不明である。これらの変更は、手順書において数値自体の 改訂はなされたものの、操作手順に反映されていない。特に、IC の作動設定値の変更は原子炉スクラムから全電源喪失までに間のプラント挙動に大きな影響を及ぼすとと もに、設置許可申請書の安全解析における前提条件が変わることも意味するため、よ り慎重な検討がなされ変更の事実とその影響が関係者に周知されるべきであったと考 える。IC を有する敦賀-1 号機や国外プラントとの比較検討も含め、規制上の観点から これらに関する今後の調査分析を行う必要がある。
(引用おわり)
(引用はじめ)
IC を手動停止した理由の妥当性に関する検討:原子炉圧力の低下が速く、操作手順書 で定める原子炉冷却材温度降下率 55℃/h を遵守できないと判断し、戻り配管隔離弁(3A 弁、3B 弁)を一旦「全閉」として IC を停止し、この操作について手順書通りであり問 題はないとしている。しかし、今回の事故のように設計基準を超える地震によって原 子炉がスクラムし外部電源も喪失するといった事態は稀有な事象であり、こうした事 象時に通常の停止操作における制限を遵守することの必要性・妥当性について改めて 検討を行うべきである。また、手順の適用基準(あるいは適用にあたっての考え方) を他プラントも含めて調査すべきである。なお、IC の作動設定値を下げたことにより IC の使用頻度(自動作動する頻度)は従来よりも高くなったはずであるが、IC の作動 により厳しい温度過渡が生じることが十分に認識されていたとは考えにくい。IC は安 全設備には属しておらず 2 系列の自動起動が必ずしも求められていないこと、また、 SRV による減圧も可能であることから、作動設定値を系列ごとに変えるか、手動起動 を基本操作とするといった手順も検討すべきであったものと考える。
(引用おわり)
(引用はじめ)
原子炉圧力を 6-7 MPa に維持する操作に関する検討:津波到達までの間、最終的な冷 温停止に向けて原子炉冷却材温度変化率 55℃/h 以下という運転上の制限を遵守しなが ら徐々に原子炉圧力を低下させていこうとしたことについて、東電事故調はもとより、 政府事故調、保安院報告書ともに、この対応に問題はなかった旨の見解を示している。 しかしながら、今回の事故のように地震により原子炉がスクラムし外部電源が喪失す るといった事態においては、IC を用いて原子炉圧力を 6-7 MPa 程度に制御するのでは なく、地震による原子炉施設への影響を調べることを重視し、速やかに冷態停止に移 行する手順を取るべきであったものと考える。従って、規制委員会は、可能であれば 海外における対応操作手順の調査を行い、国内の事業者と当該手順対応の妥当性に関 して十分な議論を行うべきである。
(引用おわり)
(引用はじめ)
IC の運転訓練の実態に関する検討:1 号機において少なくとも 20 年間にわたって IC の実作動はなく、また、敦賀 1 号機のようなシミュレータ訓練が行われた形跡もない。 IC は、安全設備には属していないものの、手順書においてはプラントの過渡時にその 作動を期待していることから、福島第一原子力発電所においてこれまでにどのような 訓練が行われてきたか、IC 作動設定値変更を訓練においてどのように取り入れたか、 また、訓練に用いた手順書がどんなものであったか等に関して調査分析を行う必要が ある。さらに、過渡変化時にその機能を期待する系統について使用経験もなく十分な 教育訓練も行われることなく原子炉の運転が行われていたこと(即ち、長年にわたっ てセーフティカルチャが欠如していたこと)に注目し、他プラントにおいてこうした 状況がないことを確認すべきである。
(引用おわり)
(引用はじめ)
圧力抑制プール冷却の手動起動に関する検討:1 号機では、SRV の作動に伴う S/C の 水温上昇に備えて格納容器冷却系を起動しているが、IC による原子炉圧力制御を行っ ている限りにおいて、SRV は作動しないはずであり、IC による原子炉圧力制御と格納容器冷却系の起動との間に整合性が取れていない。一方、2 号機では、SRV と RCIC が実際に作動し S/C の水温上昇が認められたために残留熱除去系(residual heat removal: RHR)を起動し S/C 冷却を行ったが、3 号機では 2 号機と同様の状況にあったにも拘ら ず津波の襲来を懸念して RHR を起動していない。2 号機の対応は手順通りであると理 解できるが、1 号機での操作が手順通りであるとは考えにくい。また、3 号機での対応 も手順通りか否かが不明である。このように、S/C の状況に応じた冷却機能の起動に 関しては 1,2,3 号機それぞれ異なる対応を取ったものと見なすことができる。従って、 同じ操作に対して異なる対応を取ったことを手順上どのように見なすべきか(例えば、 現場の裁量に委ねる条件をどの程度明確にすべきか)について検討する必要があると 考える。
(引用おわり)
(引用はじめ)
記録、データ、公表資料のアーカイブ化:東電が公表した資料は、同社のウェブサイ トの他、規制委員会(旧保安院)及び新潟県のウェブサイトに掲載されており、全て が 1 か所にまとめられておらず情報の散逸が懸念される。また、必要な資料を探すの が極めて面倒な状態となっている。従って、今後の調査分析に係る負担を軽減するた めに、少なくとも、東電は、当時の規制機関である保安院、規制委員会、新潟県に提 出した資料、及び、同社のプレスリリースなどで公表した資料を 1 つのポータルサイ トにおいて管理すべきである。さらに、規制委員会も東電から提出された資料及び自 らが公表した資料を含めて情報のアーカイブ化を図るべきである。
(引用おわり)