高経年化技術評価と低サイクル疲労

 通常の停止・起動ですらも低サイクル熱疲労は生じるため、その回数はカウントされることになる。通常の停止・起動とは温度変化率55℃毎時の範囲内と思われる。この運転上の制限を逸脱した場合は、より厳しめのカウントがなされることになろう。またECCSによる緊急冷却や緊急減圧も原子炉の脆化を招くものとなる。

 電気事業者にとって原子炉は資産であり、末永く活用し収益をあげたいと考えるのは私企業のとしては自然なことではある。しかし、そのために、異常時・緊急時においても運転上の制限の遵守を優先したり、ECCSの利用をためらったりすることは本来許されないし、監督官庁が厳しくチェックをする必要がある。

 高経年化に突入する原発において、運転継続を優先するがために緊急冷温停止・緊急減圧やECCSの活用を抑制的にしていないか(刈羽原発では大津波警報発令をまたずに、大規模地震発生・スクラム停止・MISV閉・外部電源喪失の段階で緊急冷温停止とすべきである)、革新型軽水炉に次世代型受動的安全システム(非常用復水器)を備えたとしても原子炉を守るために運転上の制限(55℃毎時)を優先する運用となってしまうのではないか。

 福島第一・1号機で55℃毎時の運転制限があたかも手順書通りとの扱いとされるのは、原子炉の熱疲労を防ぐことが優先されるべき前提となってしまっていたからではないか。SR弁とHPCIによる冷却では55℃毎時の運転制限の遵守は困難であろうし、高経年化審査においてもHPCIが稼働したというマイナス点がつく、2号機・3号機でもRCICがHPCIよりも優先手動起動させているのもHPCIよりもマイナス点が低いからではないか(刈羽原発でもRCICによる冷却が前提となっている)。原子炉を守るのか、安全を優先し緊急冷温停止を目指すのか、3,11の事故原因究明にも高経年化原発の運転継続や次世代軽水炉の問題にもつながるテーマであると思われる。