平成16年12月有事における原子力施設防護対策懇談会報告書

 平成16年12月「有事における原子力施設防護対策懇談会報告書」(経済産業省原子力安全・保安院内閣官房)に以下の記載がある。

 

(抜粋)

■有事等における原子力施設の防護を図る上では、原子炉の運転を適時・適切に停止 し、臨界を終息させることが重要である。そのためには、いかなる手順で原子炉の運転を停止するのか、また、原子炉の運転を停止した際に電力需給にいかなる影響が及ぶのか等について、あらかじめ検討を深めておくことが必要である。

 

■〈有事等の防護対策〉

 事態対処法、国民保護法等の規定に基づく武力攻撃原子力災害への対処に関する措 置の概要を示すと、以下のとおりである。(別紙2)

・ 原子力施設については、国民保護法第102条第1項の生活関連等施設とされてお り、有事等においては、同条の規定に基づき、都道府県知事又は指定行政機関 の長若しくは指定地方行政機関の長が、施設の管理者に対し、施設の安全確保 のための措置を講ずるよう要請するほか、都道府県公安委員会等が施設の周辺 に立入制限区域を指定する。

・ また、内閣総理大臣は、特に必要と認めるときは、関係大臣を指揮し、原子炉の運転停止命令の発出等、施設の安全確保に関し必要な措置を講じさせる。

・ さらに、事態の状況に応じ、国、地方公共団体及び原子力事業者 は原子力施設の防護に関し連携を取るとともに、運転要員や施設の安全確保等の対処措置を講じる。

 

3-3 原子炉の運転停止に当たり配慮すべき事項

 有事等における原子炉の運転停止に当たり配慮すべき事項としては、以下がある。

 ① 原子炉の運転停止に際しての安全確保(別紙 3)

・ 原子炉の運転を停止した後も、余熱の除去のための冷却系の稼動や中央制御室 の防護等、施設の安全確保のための措置及びそのための運転要員の残留が必要となる。

・ このため、国及び原子力事業者においては、原子炉の運転停止後も施設及び運転要員の安全確保対策を講じる必要がある。具体的には、国が外部の攻撃に対 し施設の安全確保を図りつつ、その保護の下、運転要員等の緊急対策要員が運転操作や緊急時対策等を実施する。 

 

【参考:原子炉の運転停止の方法(通常停止と緊急停止)】(別紙4、5) ・ 原子炉の運転停止の方法には、①通常停止、②緊急停止の2種類がある。

・ 通常停止は、定期検査などの際に原子炉や燃料に負荷がかからないように原子炉を停止させる手順であり、PWRとBWRで若干の相違はあるものの、概ね十数時間かけて原子炉を低温停止させるもの(通常負荷降下)。

・ 緊急停止は、突発的に重大なトラブルが生じ、緊急に原子炉の臨界状態を停止 させる必要があるような場合に行われる手順であり、PWR、BWRどちらの場合であっても、直ちに(数秒以内)原子炉の臨界状態を停止させ、速やかに必要最小限の安全措置を講ずることが可能。

・ ただし、原子炉を未臨界にした後、炉の温度を低下させ、安定させる過程は、通常停止と同様。 

(コメント)

「冷やす」の段階では有事であってもやはり55℃/hの温度降下率(運転制限)を遵守しながら冷温停止をするのであろうか。

 なお、B.5.bについては「有事における原子力施設防護対策懇談会」その他総合資源エネルギー調査会の専門家の意見聴取をすべきであったのではないか。科学的・客観的判断を経ないで保安院が恣意的にお蔵入りさせてはならない。