「原子力発電設備に係る工事計画の運用について(内規)」の制定について

 原子力安全・保安院は、平成15年11月27日付け「原子力発電設備に係る工事計画の運用について(内規)」を制定している。

 

 原子力発電設備に係る工事計画の運用について(内規)

 ○参考資料

 内規によると

「c.残留熱除去設備

 「残留熱除去設備」とは、通常の原子炉停止時及び復水器が使用で きない時の炉心の崩壊熱及び残留熱の除去、原子炉冷却材喪失時の炉心冷却、燃料プールの冷却・補給を目的とし、弁の切替操作によって 以下の4モードと1つの補助機能を有する設備をいい、熱交換器、ポ ンプ、ろ過装置、主要弁及び主配管で構成される。

(a) 原子炉停止時冷却モード

(b) 低圧注水モード(又は低圧注入モード)

(c) 原子炉格納容器スプレイ冷却モード

(d) サプレッションチェンバプール水冷却モード

(e) 使用済燃料貯蔵槽冷却・補給機能

 また、原子炉補機冷却設備以外で、残留熱除去系専用の冷却設備を 有するもの又は復水器が使用できない場合の崩壊熱除去を目的とした 非常用復水器系は本設備に含める。」とある(8頁以下)。

 非常用復水器(IC)は「残留熱除去設備」となる。

 電気事業法施行規則(当時)の別表二では工事計画の認可を要するものとして「二 変更の工事」「(二)発電設備の設置工事以外の変更の工事であって,次の設備に係るもの」「1 原動力設備」「(3)原子力設備」「ロ 原子炉冷却系統設備」「(6)残留熱除去設備に係るもの」は工事計画の認可の対象とされている。

 上記内規の参考資料では非常用復水器は工事計画の対象となるように読める。

 なお,原子力安全白書平成15年版62頁には

「3.工事計画対象の明確化

原子力発電所に係る安全規制においては、原子炉等規制法に基づく原子炉設置(変更)許可手続きの中で設備の基本設計の審査を行い、電気事業法に基づく工事計画の認可、届出の手続きの際に、詳細設計の審査、確認を行っています。また、工事計画の手続きの対象となる機器等は、電気事業法施行規則の別表第二及び第三で規定しています。

小委員会中間報告では、不正事案の原因と背景に係る国側の要因の一つとして、「工事計画認可・届出対象となる工事内容の範囲が不明確であったため、事業者が修理工事についての国の認可の要否を誤って認識し、結果として事実を隠ぺいするという事態を招いた」ことが指摘されました。また、具体的な再発防止対策として、「規制制度の運用の明確化及び透明化」の中で「国の工事計画の認可・届出を要する工事の内容について、安全確保上の重要性から再検討・整理し、その範囲を明確化すべきである」と示されました。

 この報告書を踏まえ、原子力安全・保安院では、認可、届出を要する工事の内容と申請書等に記載すべき事項について検討、整理を行い、電気事業法施行規則別表第二及び第三を改正しました。(平成15年10月1日施行)

改正の概要は、次のとおりです。

① 原子力安全委員会は、原子炉設置許可の審査の際に考慮すべき安全機能の相対的重要度を、「発電用軽水型原子炉施設の安全機能の重要度分類に関する審査指針」(平成2年8月30日 原子力安全委員会決定)(以下「重要度分類指針」)で定めています。

原子力発電施設の設置(新増設)の工事については、この重要度分類指針におけるクラス1~3の機能を有する機器等を原則として認可の対象としました。

② 既設の原子力発電設備については、建設時に認可を受けた工事計画との相違点に着目し、建設当初の設計から設計内容を変更する改造の工事や、機器等の性能や強度に影響のある修理の工事について、工事計画の認可又は届出を要することとしました。この場合も、機器等の安全上の重要度に応じ、例えば改造の工事の場合において、重要度分類指針におけるクラス1及び2の機能を有する機器等を認可対象とし、クラス3の機器等は届出とするなど、安全上重要な機器等に重点を置いた審査を行うこととしました。

③ 規制の対象を明確にするため、機器等を、原子炉の種類毎(沸騰水型原子力発電設備/加圧水型原子力発電設備/ナトリウム冷却型原子力発電設備)に明記しました。申請書本文に記載すべき事項も、対象となる機器等の特性を考慮し、原子力安全・保安院が当該機器等の性能、構造強度、耐震性を審査、確認する際に基本となる仕様に関する事項としました。」とある。

 平成14年に社会問題化した東電トラブル隠しの背景に,工事計画認可届出の対象が不明確であったことがあるとして,平成15年改正で施行規則別表第二が整理されたという流れのようであるが,非常用復水器も残留熱除去設備として,その変更工事には工事計画の認可(少なくとも届出)が必要だったのではないか。平成22年の圧力高設定値変更が保安規定の変更認可だけで足りたのか,保安院も保安規定の変更認可申請の際に,工事計画の認可(届出)や使用前検査が必要であると受け止めなかったのか(使用前許可がなければ稼働できない),なお探求したい。