工学的安全施設起動信号の変更を伴う計測制御系統設備の変更工事

 当時の電気事業法施行規則別表第二では計測制御系統設備のうち,工学的安全施設起動信号の変更を伴うものは工事計画認可の対象とされている。

 

福島第一原子力発電所第1号機の工事計画の認可について
(原子炉スクラム設定値変更)

2010年5月31日


 平成22年4月19日付けで申請のありました、東京電力株式会社福島第一原子力発電所第1号機の計測制御系統設備(原子炉圧力高による原子炉スクラム※設定値変更)に係る工事計画について、電気事業法第47条第1項の規定に基づき、平成22年5月31日に認可しました。

※原子炉非常停止

 

 

 

 


[問い合わせ先]原子力安全・保安院 原子力発電安全審査課/電

 ちなみに非常用復水器の圧力高設定値変更と同時に行われている原子炉スクラム圧力高設定値変更工事は,計測制御系統設備(原子炉圧力高による原子炉スクラム設定値変更)に係る工事計画として認可の対象とされている。

 ここで非常用復水器が「工学的安全施設」と言えるかが問題となる。内規では非常用復水器系は本設備に含める。」とある(8頁以下)。工事計画の認可届出の対象となるかの場面においては,非常用復水器(IC)は「残留熱除去設備」と位置づけられる。

 そして「内規」によると「残留熱除去設備」とは

「通常の原子炉停止時及び復水器が使用できない時の炉心の崩壊熱及び残留熱の除去、原子炉冷却材喪失時の炉心冷却、燃料プールの冷却・補給を目的とし、弁の切替操作によって 以下の4モードと1つの補助機能を有する設備をいい、熱交換器、ポ ンプ、ろ過装置、主要弁及び主配管で構成される。

(a) 原子炉停止時冷却モード

(b) 低圧注水モード(又は低圧注入モード)

(c) 原子炉格納容器スプレイ冷却モード

(d) サプレッションチェンバプール水冷却モード

(e) 使用済燃料貯蔵槽冷却・補給機能」

とされており,2号機以下で設置されている「RHR」のことであろう。

 では「RHR」が「工学的安全施設」に該当するか。

 原子力百科事典では,「工学的安全施設は、原子炉冷却材系設備の破損などに起因して原子炉内の燃料の破損による核分裂生成物の放散の可能性がある場合に、これらを防止または抑制し、発電所周辺の一般公衆および発電所従業員の安全を確保する施設で、非常用炉心冷却設備(ECCS)と原子炉格納施設で構成されている。」とある。

 本文では「1.非常用炉心冷却設備(ECCS)

 図1に110万kW(1100MWe)級BWRの非常用炉心冷却系を示す。この設備は、原子炉冷却材圧力バウンダリの配管(最大口径配管として原子炉冷却材再循環系を想定)が破断し、原子炉冷却材喪失事故(LOCA)が発生した場合に、燃料の過熱による燃料被覆管の大破損を防ぎ、これに伴う金属(ジルコニウム)と水の反応(水素が発生)を無視しうる程度に抑える設備である。BWRのECCSは、低圧炉心スプレイ系(LPCS)、低圧注水系(LPCI)、高圧炉心スプレイ系(HPCS)および自動減圧系(ADS)より構成され、基本的には原子炉水位低信号またはドライウェル圧力高信号(ただし自動減圧系は同時信号)により自動起動される。
 低圧炉心スプレイ系は、低圧炉心スプレイポンプにより水源のサプレッション・チェンバ内のプール水を汲み上げ、炉心上にとりつけたスパージャ・ヘッダのノズルから燃料集合体上にスプレイして炉心を冷却する。破断口から溢流した冷却水は、サプレッション・チェンバに戻って再びスプレイ水として循環する。
 低圧注水系は、低圧注水ポンプ(残留熱除去系ポンプ)および残留熱除去系熱交換器などからなる残留熱除去系のうちの1つのモードである低圧注水モード(図2参照)を使用し、原子炉容器内に冷却水を注入する。水源はサプレッション・チェンバ内のプール水を使用する。
 高圧炉心スプレイ系は、小配管破断から中配管破断に至るまでの破断に対して単独で、被覆管の大破損を防止できる容量の冷却水をスプレイできる。水源には復水貯蔵タンク水を使用するが、復水貯蔵タンク水位が低下すると自動的にサプレッション・チェンバ内のプール水に切替わる。
 自動減圧系は、原子炉冷却材系の中小破断時に原子炉蒸気をサプレッション・チェンバ内のプール中へ逃がし、原子炉圧力をすみやかに低下させて、低圧炉心スプレイ系あるいは低圧注水系による注水を早期に可能とする。
 図3に135万kW(1350MWe)級のABWRの非常用炉心冷却系を、表1にABWRとBWRの安全設備の比較を示す。ABWRでは、原子炉再循環系にインターナルポンプ方式を採用しているので、事故解析ではBWRにおいて想定される大口径再循環配管の破断と異なり、炉心より上部に位置する中小口径配管の破断あるいは蒸気管の破断を想定している(図4およびATOMICA <02-03-13-02> 事故(BWRの場合))を参照)。原子炉冷却材圧力バウンダリのいかなる配管破断を想定しても炉心を冠水維持できるため、ECCS設計ではスプレイ方式ではなく、注水による冠水冷却方式を採用している。また高圧系注水を充実するため、原子炉隔離時冷却系(RCIC)に非常用炉心冷却の役目を持たせている。」

 とある。RHRのいくつかの機能の中にECCSがあるから,RHRもECCSとして工学的安全施設となるはずである。なお,1号機にはないRCICについても非常用炉心冷却の役目を持たせているとある。

 さすれば,非常用復水器はECCSではないとしても,工事計画認可届出の対象となるかという次元では,崩壊熱除去設備(RHR)と同じく工学的安全施設と扱われるべきではないか,その起動信号の変更を伴う計測制御系設備の工事は別表第二中段に該当するのではないか。

 

 ※ 誤りがあればご指摘よろしくお願い申し上げます。