非常用復水器は本文では「五,原子炉及びその付属施設の位置,構造及び設備」「ホ 原子炉冷却系統施設の構造及び設備」「(ハ)非常用冷却設備」「(2)主要な機器及び管の個数及び構造」の「a」として「主蒸気管隔離弁閉鎖などにより,主復水器が利用できない場合に崩壊熱を除去するため,非常用復水器が原子炉建屋内に設けられる」と掲げられている。続いて「b 炉心スプレイ系」「c 高圧注水系」が並んでいる。
続いて「五」「ヘ 計測制御系統施設の構造及び設備」として「(ロ)安全保護回路」があり「(1)原子炉停止回路の種類」に続いて「(2)その他の主要な安全保護回路の種類」「a 補助保護機能」として「ⅰ)原子炉水位異常停止信号による主蒸気隔離弁閉鎖と高圧注水系の起動」「ⅱ)主蒸気管破断の状態の圧力などの信号による主蒸気隔離弁の閉鎖」に続いて「ⅲ)原子炉圧力高の信号による非常用復水器の作動」が掲げられている。なお,続いて「ⅳ)原子炉建屋放射能高の信号による常用換気系の閉鎖と非常用ガス処理系の起動」「ⅴ)ドライウェル圧力高の信号による炉心スプレイ系,高圧注水系の起動」「ⅵ)ドライウェル圧力高および原子炉水位異常低下の同時信号による格納容器冷却系の起動」「ⅶ)オフ・ガスの放射能高の信号によるオフ・ガス系出口弁の閉鎖」「ⅷ)原子炉水位異常低下およびドライウェル圧力高の同時信号による自動圧力逃し弁の作動」「ⅸ)原子炉水位異常低下および原子炉圧力低下の同時信号による炉心スプレイ系の起動」となっている。「b 警報回路」「c 連動回路」となっている。
※ 非常用復水器の作動は、原子炉スクラムと同じく【原子炉圧力高】の信号によるが、自動圧力逃し弁は、【原子炉水位異常低下】および【ドライウェル圧力高】の同時信号によるとされている。【原子炉圧力高】と【ドライウェル圧力高】は異なる信号であるが、SR弁の起動にかかる信号は主文では、原子炉スクラム・非常用復水器と異なる【ドライウェル圧力高】なのであろうか。
設置許可申請書本文においても非常用復水器の位置づけはECCSなどと並ぶ重要なものとされているし,その起動回路は「安全保護回路」として原子炉スクラムと同じく「原子炉圧力高」となっている。この「圧力高」設定値を「原子炉スクラム圧力高設定値」と同時に,しかし切り離して引き下げる変更工事について,設置変更許可申請(あるいは電事法による工事計画認可ないし届出,使用前許可)が不要というのは極めて疑問がある。非常用復水器の圧力高設定値変更工事も専門技術的判断が,しかるべき専門技術的機関において行われるべき工事のはずである。漫然と引き下げを認めたのでは職務上の注意義務違反が問われることとなろう。
また添付書類十では,非常用復水器(隔離時復水器)は「主蒸気管破断事故」において登場するが,主蒸気隔離弁閉止後は,炉心は非常用復水器等で冷却されること,「解析条件」として,「g.放射能閉じ込め機能の観点から,主蒸気隔離弁に単一故障を仮定するとして,8個の主蒸気隔離弁のうち1個が閉止しないものとし,閉止した7個の主蒸気隔離弁から蒸気が漏えいするものとする。各主蒸気隔離弁の閉止直後の漏えい率は,設計漏えい率10%/d(非常用復水器始動圧力において,圧力容器気相体積に対し,飽和蒸気で)とし,4本の主蒸気管で7個閉止という条件を考慮して全体で30%/dの漏えい率とする。その後の漏えい率は,原子炉の圧力及び温度に依存して変化するものとする」「h.主蒸気隔離弁閉止後,非常用復水器及び原子炉停止時冷却系の作動により減圧されるので蒸気がサブレッション・チェンバのプール水中に移行することはないものとする」「i 主蒸気隔離弁閉止後,原子炉圧力は,非常用復水器及び原子炉停止時冷却系によって24時間で直線的に大気圧にまで減圧され,主蒸気系からの漏えいは停止するものとする」などとされ,この「解析条件」に基づいて核分裂生成物の大気中の放出量等が計算され,線量当量の評価など「安全解析」がなされている。非常用復水器の起動圧力高の変更は,安全解析の前提に影響を及ぼしうるのである。
なお,SR弁との関係で,SR弁とICのいずれが優先起動するのかも安全解析に影響する。添付書類十では,その他の過度変化や事故においてSR弁による減圧がなされることが前提の検討がなされている(外部電源喪失等)。ICの優先起動により,SR弁起動を前提とする安全解析は見直しが必要となろう。
このように考えると非常用復水器の圧力高設定値変更工事が保安規定の変更認可だけで足りたのかは大いに疑問がある。