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成年後見と取締役の欠格

 現行会社法では成年被後見人・被保佐人は取締役となることができないとされています(会社法331条1項2号)。取締役が成年後見手続開始決定を受けると資格喪失により当然に退任となってしまいます。

 

 今国会で審議入りした「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律案」(拙稿「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律案が審議入り」参照)においても成年後見を取締役の欠格事由とする規定の見直しは含まれておらず、附則7条において今後の検討課題とされています。

 

(検討)

第七条

  政府は、会社法(平成十七年法律第八十六号)及び一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)における法人の役員の資格を成年被後見人又は被保佐人であることを理由に制限する旨の規定について、この法律の公布後一年以内を目途として検討を加え、その結果に基づき、当該規定の削除その他の必要な法制上の措置を講ずるものとする。

 

    上場企業などと家族経営の小規模な同族会社では事情が異なるかもしれませんが、成年後見業務をしていると、同族会社においては、創業者代表者が成年後見を理由に会社の役員から資格喪失により当然に退任となることが本人にとって酷な場面に遭遇することもありますので、当然には一律に資格喪失とはならない措置が必要かもしれません。

 

    なお、成年後見は民法上の委任契約の終了事由となっています(民法653条3号)。この規定の見直しも検討されてもよいのかもしれません。