東電津波試算の怪その18 怪しげな平成28年試算でも事故は防げた?


 東京電力は原発事故後の平成28年7月22日付で「2008年試計算結果に基づく確認の結果について」と題する塗り絵のような書面を作成し裁判所に証拠提出している。

 この試算は要するに平成20年試算に基づく対策として南側だけ防潮堤を建てても東側から襲来した3.11津波は防げなかったとする極めて幼稚なものである(最高裁はこれを採用している)。

 しかし,平成28年試算をよく見ると南側・南東側の防潮堤の効果で建屋の西側(海と反対方向)や4号機周辺,さらには4号機よりも西側にある共用プール建屋の浸水の程度は相対的に低いように見える(塗り絵の水色部分)。

 共用プール建屋では3.11津波の際にも1階に設置されていた2台のD/Gは機能を維持している。地下1階に設置されていた配電盤(M/C)が機能喪失したため,この2台のD/Gも利用ができなかったようである。平成28年試算では3.11津波よりも共用プール建屋周辺の浸水は緩和されている。果たしてこの試算において共用プール建屋の地下1階の配電盤は機能喪失したのであろうか。少なくとも検証が必要である。

 東電平成28年試算においてケーブル貫通部からの浸水が発生し配電盤の機能を喪失させたのであろうか。

 東京電力によると地下1階の浸水経路は1階及び2号機電気品室ケーブル貫通部からとある。

  https://www.tepco.co.jp/cc/direct/images/130205d.pdf


 やはり東電平成28年試算において2号機からケーブル貫通部を通って浸水をしたという結論になるのであろうか。1階からの浸水の影響との寄与度もわからない。


 仮に共用プール建屋の電源が1台だけでも維持されていた場合,2号機・4号機は全電源喪失とはならず,2号機と1号機(さらには3号機),4号機と3号機は電力融通が可能であるから,本件事故は防げたのではないか。

 そうすると「南側だけ防潮堤」という最高裁のヘンテコな理屈でも事故はなお防げた可能性もある。

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